令和5年度第三種電気主任技術者下期試験 理論科目 問40 解説 問4 問4
問4 図のように,透磁率 μ0[H/m]の真空中に,無限に長い直線状導体Aと1辺a[m]の正方形のループ状導体Bが距離d[m]を隔てて置かれている。AとBはxz平面上にあり,Aはz軸と平行,Bの各辺はx軸又はz軸と平行である。A,Bには直流電流IA[A],IB[A]が,それぞれ図示する方向に流れている。このとき,Bに加わる電磁力として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。なお,xyz座標の定義は,破線の枠内の図で示したとおりとする。
- 0N つまり電磁力は生じない
- μ0IAIBa^2 / (2πd(a+d)) [N]の+x方向の力 ✓ 正答
- μ0IAIBa^2 / (2πd(a+d)) [N]の-x方向の力
- μ0IAIBa(a+2d) / (2πd(a+d)) [N]の+x方向の力
- μ0IAIBa(a+2d) / (2πd(a+d)) [N]の-x方向の力
解説
無限に長い直線状導体Aが作る磁束密度により、ループ状導体Bの各辺に働く電磁力の合力が、導体Aから遠ざかる方向へ作用するため、この電磁力は [N]の+x方向となります。
アンペールの法則とフレミングの左手の法則
電流が流れる導体が磁界中にあるとき、その導体には電磁力が働きます。この現象を理解するには、まず電流が作る磁界の強さを知る必要があります。無限に長い直線状導体に電流 [A]が流れている場合、そこから距離 [m]の場所における磁束密度 [T]は、アンペールの法則に基づき、以下の式で表されます。
ここで、磁界中にある導体の一部が受ける力 [N]は、フレミングの左手の法則に従います。電流 [A]、磁束密度 [T]、導体の長さ [m]とすると、これらの関係は となります。磁界の向きと電流の向きが直交している場合、この力が導体に対して垂直に働きます。
ループ状導体Bに働く力の分析
導体Aと導体Bの配置関係から、導体Bの4つの辺に働く力をステップごとに確認します。
磁束密度の分布 導体Aに流れる電流 によって、導体Bが存在する位置には、図のy軸負の方向(紙面裏側から表側へ向かう向き)の磁束密度が生じています。導体Aに近い辺ほど、磁束密度は強く、遠い辺ほど弱くなります。
z軸と平行な2辺に働く力 導体Bには、導体Aと平行な2本の辺があります。近い方の辺には導体Aと同じ向きの電流 が流れているため、両者の間には吸引力が働きます。一方、遠い方の辺には逆向きの電流成分(ループを回る成分)が流れているため、導体Aからは反発力を受けます。このとき、近い辺の磁束密度は 、遠い辺の磁束密度は です。
合力の算出 フレミングの左手の法則に基づき、近い辺に働く引力 と、遠い辺に働く斥力 を求めます。電流 と が並行して流れているため、全体の力はこれら2つの力の差となり、導体Aに近い側の引力が勝るため、導体Aに向かう引力が全体の力となります。しかし、図で電流の向きを精査すると、近い辺と遠い辺では の流れるz軸方向の成分が逆向きであることがわかります。結果として、遠い辺の斥力の方が相対的に強まり、全体として導体Aから離れる方向、つまり+x方向へ押し出される力が残ります。
x軸と平行な2辺の扱い 残る上下の辺については、互いに逆向きの電流が流れており、かつ導体Aからの距離も対称であるため、互いに打ち消し合い、合力はゼロとなります。
最終的に導体Aとの距離の差分を考慮して計算すると、力は の差分として導かれ、選択肢の計算式と一致します。
導体Aに流れる電流の向きと、ループ状導体Bの各辺を流れる電流の方向を重ねてみると、導体B全体が受ける力の向きが浮かび上がってきます。