令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 法規科目 問50 解説 問5 問5
問5 次の文章は,「電気設備技術基準」に基づく支持物の倒壊の防止に関する記述の一部である。架空電線路又は架空電車線路の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は,当該支線に係るものを含む。)は,その支持物が支持する電線等による(ア),10 分間平均で風速(イ) m/s の風圧荷重及び当該設置場所において通常想定される地理的条件,(ウ) の変化,振動,衝撃その他の外部環境の影響を考慮し,倒壊のおそれがないよう,安全なものでなければならない。ただし,人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路にあっては,その施設場所を考慮して施設する場合は,10 分間平均で風速(エ) m/s の風圧荷重の(オ) の風圧荷重を考慮して施設することができる。上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 引張荷重 60 温度 3分の2
- 重量荷重 60 気象 3分の2
- 引張荷重 40 気象 2分の1 ✓ 正答
- 重量荷重 60 温度 2分の1
- 重量荷重 40 気象 2分の1
解説
電気設備技術基準の解釈第54条「支持物の強度」によれば、架空電線路の支持物の倒壊防止に関する記述において、その支持物が支持する電線等による荷重は「引張荷重」、通常考慮する風速は「40m/s」、外部環境の変化は「気象」、そして人家が多く連なる場所での風圧荷重は「2分の1」に軽減されるため、選択肢(3)が正答となります。
判断の土台となる「支持物の強度」に関する基準
この問題は、「電気設備に関する技術基準を定める省令の解釈」(通称「電技解釈」)の第54条「支持物の強度」に関する知識を問うものです。この条文は、電線路の安全性を確保するために、支持物の材料と構造がどのような荷重に耐え、倒壊しないように設計されるべきかを具体的に定めています。支持物は、日々の運用における電線や設備の荷重だけでなく、予測される最大の自然現象(強風、積雪など)にも耐えうる強度を持つ必要があります。
支持物にかかる主な荷重
支持物には、大きく分けて以下のような荷重が作用します。
- 引張荷重: 電線が支持物を引っ張る力のことです。電線のたるみ(弛度)や、電線路の方向が変わる箇所で特に大きくなります。支持物の設計では、この水平方向の力が倒壊に繋がる重要な要因となります。
- 重量荷重: 電線や碍子、その他取り付けられた設備の自重が支持物に垂直方向に作用する荷重です。これには着雪や着氷による重量増加も含まれます。
- 風圧荷重: 風が電線や支持物の表面に当たることで発生する荷重です。風の強さ、電線や支持物の断面積によってその大きさは変動します。
外部環境要因「気象」と「温度」
支持物の強度を考える上で考慮すべき外部環境の変化には、気象の変化が含まれます。 「気象」は、温度、湿度、風、降雨、降雪、雷など、大気の状態全般を指す広範な概念です。これらの気象条件の変化は、電線の着雪・着氷による重量増加、温度変化による電線の伸縮、強風による風圧荷重の増大など、支持物にかかる様々な影響を及ぼします。「温度」は気象の一要素ではありますが、「気象」という言葉の方が、支持物の強度設計において考慮すべき外部環境の変化をより包括的に表現しています。
風圧荷重の軽減措置
電技解釈では、電線路の設置場所の状況に応じて、考慮すべき風圧荷重を軽減できる特例を設けています。例えば、人家が多く連なる市街地では、周囲の建物が風を遮る効果があるため、一般的な場所よりも低い風圧荷重を想定して設計することが認められています。これは、安全性を確保しつつ、過剰な設備投資を避けるための合理的な規定です。
設問の条件と判断ステップ
設問の空欄(ア)~(オ)に当てはまる語句を、電気設備技術基準の解釈第54条に基づいて判断します。
空欄(ア)「電線等による荷重の種類」の特定
- 電気設備技術基準の解釈第54条1項には、「その支持物が支持する電線等による引張荷重、10分間平均で風速40m/sの風圧荷重及び当該設置場所において通常想定される地理的条件、気象の変化、振動、衝撃その他の外部環境の影響を考慮し」と記載されています。
- この記述から、電線等によって支持物に作用する荷重は「引張荷重」であることが分かります。「重量荷重」は電線自体の重さによる垂直方向の力ですが、ここでは電線が支持物を引き込む水平方向の力を指しており、「引張荷重」が適切です。
- したがって、(ア)には「引張荷重」が入ります。
空欄(イ)「標準的な風速」の特定
- ステップ1と同じく、電気設備技術基準の解釈第54条1項には、「10分間平均で風速40m/sの風圧荷重」と明確に規定されています。
- したがって、(イ)には「40」が入ります。
空欄(ウ)「外部環境の変化」の特定
- 電気設備技術基準の解釈第54条1項では、「通常想定される地理的条件、気象の変化、振動、衝撃その他の外部環境の影響」を考慮するとあります。
- 「気象」は温度、湿度、風、雨、雪など、多岐にわたる環境要因を包括する言葉であり、支持物の強度に影響を与える外部環境の変化として最も適切です。
- したがって、(ウ)には「気象」が入ります。
空欄(エ)と(オ)「人家が多く連なる場所での風圧荷重の軽減」の特定
- 問題文の後半は、人家が多く連なる場所における特例に関する記述です。電気設備技術基準の解釈第54条2項には、「人家が多く連なっている場所に施設する電線路の支持物は、前項の規定にかかわらず、その施設場所を考慮して施設する場合は、同項に規定する風圧荷重の2分の1の風圧荷重を考慮して施設することができる。」と定められています。
- このことから、軽減される風圧荷重の割合は「2分の1」であることが分かります。これは問題文の空欄(オ)に該当します。
- なお、問題文中の「10 分間平均で風速(エ) m/s の風圧荷重の(オ) の風圧荷重」という記述の(エ)は、特例を適用しない標準風速(イ)を指しており、ここには「40」が入ると解釈されます。選択肢の表の列は、左から(ア)(イ)(ウ)と並び、最後が(オ)に対応すると考えられます。
- したがって、(オ)には「2分の1」が入ります。
これらの判断から、(ア)引張荷重、(イ)40、(ウ)気象、(オ)2分の1という組み合わせが導き出され、これに合致する選択肢は(3)です。
電気設備技術基準の解釈第54条の条文と、選択肢の各項目を一つずつ丁寧に重ねてみると、架空電線路の支持物の安全設計の根拠が明確に見えてきます。