令和6年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 問40 解説 問4 問4
問4 原子力発電に関する記述として, 誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) 原子力発電所では, ウラン235を2~4%まで濃縮した高濃縮ウランを使い, エネルギーを取り出している。 ✓ 正答
- (2) 放射線にはα線, β線, γ線などがあり, 放射線を出す能力を放射能といい, 放射能を有する物質を放射性物質と呼ぶ。
- (3) 原子燃料の原子核に, エネルギー値が低く速度の遅い中性子を衝突させると, 核分裂を起こす。
- (4) 原子燃料の核分裂により発生した1個以上の熱中性子が, 別の原子核を分裂させる反応が連続的に持続する現象を連鎖反応という。
- (5) 減速材は, 核分裂によって新たに生じたエネルギー値が高い高速中性子のエネルギーの一部を吸収させて, 低速の熱中性子を得るために用いる。
解説
原子力発電所で使用されるウラン燃料は、核分裂を起こしやすいウラン235の割合を3~5%程度に高めた「低濃縮ウラン」であるため、選択肢(1)の「高濃縮ウラン」という記述は誤りです。
原子力発電と核分裂の仕組み
原子力発電の根幹には、重い原子核が分裂して別の原子核に変わる「核分裂」現象があります。自然界に存在する天然ウランは、その大部分が核分裂を起こしにくいウラン238であり、核分裂を起こしやすいウラン235はわずか0.7%程度しか含まれていません。このままでは安定した発電に必要なエネルギーを取り出せないため、ウラン235の比率を人工的に高める「濃縮」という工程が必要となります。
原子力発電所(軽水炉)で用いられるウラン燃料は、このウラン235の含有率を3~5%程度まで高めた低濃縮ウランです。一方で、高濃縮ウランとはウラン235を20%以上(多くは90%以上)に濃縮したものを指し、これは主に核兵器や研究用原子炉などに用いられるもので、発電所での一般的な燃料としては使用されません。
また、核分裂反応を維持するための重要なプロセスに「減速」と「連鎖反応」があります。核分裂によって放出される中性子はエネルギーが非常に高い「高速中性子」ですが、このままでは次のウラン235に吸収されにくく、効率よく核分裂を連鎖させることができません。そこで「減速材」を用い、高速中性子を他の原子核に衝突させてエネルギーを奪い取り、核分裂を起こしやすい速度まで減速させた「熱中性子」に変える必要があります。この熱中性子による核分裂が繰り返される現象を「連鎖反応」と呼び、制御棒などを用いて中性子の数を調整することで、エネルギーの放出を一定に保つ仕組みが原子力発電所です。
原子力発電のプロセスに関する判断
- ウラン235の濃縮度と燃料の定義を確認します。原子力発電所に用いられるのは3~5%程度の低濃縮ウランであり、記述にある「高濃縮ウラン」とは、兵器級のものなど極めて高い濃縮度を指すため、記述は誤りであると判断します。
- 放射線や放射能の定義を確認します。放射線を出す能力そのものを放射能と呼び、その能力を持つ物質を放射性物質と呼ぶため、選択肢(2)の記述は正当です。
- 核分裂の条件を確認します。核分裂は、中性子が原子核に衝突することで発生し、特に熱中性子と呼ばれる速度の遅い中性子の方がウラン235と反応しやすいため、選択肢(3)の記述は正当です。
- 連鎖反応の定義を確認します。核分裂で放出された中性子が、さらに周囲の原子核を分裂させる反応を繰り返すことを指すため、選択肢(4)の記述は正当です。
- 減速材の役割を確認します。高速中性子の速度を落とし、熱中性子を得ることで核分裂を効率化させるのが減速材の目的であるため、選択肢(5)の記述は正当です。
ウラン235の濃縮割合と、それに伴う「低濃縮」「高濃縮」という呼称の違いに注目すると、原子力発電における燃料の性質が明確に見えてきます。