令和6年度第三種電気主任技術者上期試験 電力科目 問50 解説 問5 問5
問5 燃料電池の原理と特徴に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 燃料は外部から供給され,直接,交流電力を発生する。 ✓ 正答
- 電解質により,りん酸形,溶融炭酸塩形,固体高分子形などに分類される。
- 水の電気分解と逆の化学反応を利用した発電方式である。
- 発電時の排熱を空調や給湯に活用できる。
- 天然ガスやメタノールを改質して発生させた水素を燃料として利用できる。
解説
燃料電池は水素と酸素の化学反応によって直接直流電力を取り出す装置であり、交流電力を発生するという記述が含まれる選択肢(1)が誤りです。
燃料電池の基本原理
燃料電池は、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電装置です。この変換過程には酸化還元反応が関わっています。具体的には、アノード(燃料極)に供給された水素が電子を放出して水素イオンとなり、カソード(空気極)で酸素が電子と水素イオンを受け取って水が生成されます。
この反応の過程で外部回路に電子が流れることで電流が発生します。この電子の移動によって得られる電力は直流です。もし交流電力が必要な場合には、燃料電池本体の出力端子の後に、直流を交流に変換するインバータなどの電力変換装置を接続する必要があります。
燃料電池の分類と構成
燃料電池の分類において、その中心的な役割を果たすのが電解質の種類です。電解質は、水素イオン(プロトン)や水酸化物イオン、炭酸イオンなどを移動させる媒体であり、この違いによって運転温度や適した用途が異なります。
主要な種類として以下のものが挙げられます。
- りん酸形燃料電池(PAFC):液体であるりん酸を電解質に用いるもので、排熱利用に適しています。
- 溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC):溶融した炭酸塩を電解質に用いる高温型であり、高効率な発電が可能です。
- 固体高分子形燃料電池(PEFC):高分子膜を電解質に用いるもので、低温で動作するため起動が速く、家庭用コージェネレーションなどに用いられます。
これらの燃料電池は、水の電気分解の逆反応、すなわち水素と酸素から水と電気を得る反応を利用しています。また、燃料電池システムでは、天然ガスなどの炭化水素系燃料から水素を抽出する「改質」を行うことで、水素そのものを供給する以外の運用も行われています。この過程で発生する熱は、空調や給湯といった熱供給に利用することでエネルギーの総合的な利用効率を高めることができます。
各選択肢の判断
- 燃料電池は化学反応の結果として電子の流れ(直流)を生み出す装置であるため、直接交流電力を発生させるという記述は誤りです。
- りん酸形、溶融炭酸塩形、固体高分子形などの分類は、電解質の種類に基づいており正しい記述です。
- 水の電気分解が電気を使って水から水素と酸素を得るのに対し、燃料電池はその逆のプロセスであるため正しい記述です。
- 発電に伴う廃熱を給湯や暖房に利用する熱電併給(コージェネレーション)は、燃料電池の大きな特徴の一つであり正しい記述です。
- 水素を直接供給するだけでなく、改質装置を用いて天然ガスやメタノールから水素を取り出し、燃料として利用することは広く行われています。
燃料電池の構造や化学的な反応プロセスを一つずつ重ねてみると、直流と交流のどちらが直接出力されるのかという関係が見えてきます。