令和7年度第三種電気主任技術者下期試験 機械科目 問162 解説 問16(b) 問16
問16(b) 次の図は,パワー半導体デバイスとしてダイオードを用いた三相整流装置の回路を示す。平滑リアクトルのインダクタンスLd[H]は十分に大きく,直流電流Id[A]は一定になっているものとする。交流側にリアクタンスXL[Ω]のリアクトルがあると転流時に重なり角が生じ,直流電圧が降下する。また,ダイオードの順電圧降下VF[V]によっても直流電圧が降下する。これら以外の電圧降下は無視する。入力交流電圧がVL[V]のときのこの整流装置の出力電圧Vd[V]は次式で求められる。Vd=3√2/π*VL-3/π*XL*Id-2VF。この整流装置の入力交流電圧はVL=200V,周波数はf=50Hzで,直流電流はId=36Aである。交流側のリアクトルのインダクタンスはLL=5.56*10^-4Hで,その抵抗値は平滑リアクトルの抵抗値とともに無視できるものとする。また,各ダイオードの順電圧降下はVF=1.0Vで一定とする。出力電圧Vdの値[V]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 270
- 264
- 263
- 262 ✓ 正答
- 251
解説
三相整流装置において、入力交流電圧200V、周波数50Hz、直流電流36A、交流側リアクトル5.56×10^-4H、ダイオード順電圧降下1.0Vの条件下で、与えられた直流電圧降下の公式に各数値を代入して計算すると、出力電圧は262Vとなります。
三相整流回路における電圧降下のメカニズム
三相ブリッジ整流回路では、交流電源のインダクタンス成分(漏れリアクタンスなど)が存在すると、電流が流れる素子を切り替える際に、一瞬だけ複数の素子が導通する「転流」という現象が起こります。この転流期間中は出力電圧が短絡された状態に近くなるため、理想的な整流電圧から一定の電圧分が差し引かれます。これが問題文にあるリアクタンスによる電圧降下です。
また、ダイオードは導通時に一定の順電圧降下(VF)を伴います。ブリッジ回路では、常に2つのダイオードが直列に導通しているため、合計で2VF分の電圧降下が生じます。これらを含めた実際の出力電圧Vdは、理想的な整流電圧から転流に伴う電圧降下成分と、素子の順電圧降下成分を引いた値となります。
出力電圧の算出手順
与えられた式に基づき、以下の手順で値を求めます。
交流側リアクタンス XL[Ω] を算出します。 誘導性リアクタンスの公式 XL = 2 * π * f * LL を用います。 XL = 2 * π * 50 * 5.56 * 10^-4 = 100 * π * 5.56 * 10^-4 ≒ 0.1747[Ω]
理想的な直流電圧(無負荷時の電圧)を算出します。 式中の第1項 (3 * √2 / π) * VL を計算します。 (3 * 1.414 / 3.1416) * 200 ≒ 1.35 * 200 = 270[V]
転流による電圧降下を算出します。 式中の第2項 (3 / π) * XL * Id を計算します。 (3 / 3.1416) * 0.1747 * 36 ≒ 0.9549 * 0.1747 * 36 ≒ 6.0[V]
ダイオードによる電圧降下を算出します。 式中の第3項 2VF を計算します。 2 * 1.0 = 2.0[V]
全体の出力電圧 Vd を確定します。 Vd = 270 - 6.0 - 2.0 = 262[V]
交流側の電源電圧から、リアクトルのインダクタンスによる電圧の食い合いと、整流素子内部での損失分を差し引いてみると、直流側の負荷へ届く電圧の大きさが明確に見えてきます。