令和7年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 問110 解説 問11 問 11
問11 直流送電に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) 非同期連系ができ,異周波数間の系統連系が可能である。
- (2) 送電線のリアクタンスの影響がなく交流の安定度による制約が無いため,電線の許容電流限度まで送電できることから大電力の長距離送電が可能である。
- (3) 直流は零点を通過しないため,故障時に生じる大電流を遮断できる直流遮断器の開発に課題がある。
- (4) 直流電圧の最大値は同じ実効値の交流電圧より高くなるため,絶縁レベルを増加させる必要がある。 ✓ 正答
- (5) 送受電端に交直変換装置が必要となり,他励式の場合は変換装置から発生する高調波対策が必要となる。
解説
直流電圧の最大値は同じ実効値の交流電圧よりも低くなるため、絶縁レベルを増加させる必要があるとする選択肢(4)が誤りです。
直流と交流の電圧特性
電気回路において「電圧の大きさ」を比較する際、交流では正弦波の波形が周期的に変化するため、実効値という指標が用いられます。交流の最大値(振幅)は、実効値に(約1.41倍)を乗じた値となります。これに対して直流電圧は、時間的に一定の値を保つため、電圧の最大値と実効値は同じ値となります。
この性質により、同じ実効値の電圧を基準とした場合、交流の最大値は直流の最大値よりも高くなります。絶縁設計においては、機器や電線に印加される「最大電圧」に耐えられる能力が求められるため、交流と比較して直流の方が絶縁性能を低く抑える、あるいは同じ絶縁性能であればより高い電圧を送電できるという利点があります。
絶縁レベルと直流送電の比較
直流送電の特性を各選択肢に当てはめて判断します。
- 直流は周波数の概念がないため、異なる周波数の系統間や、同期していない系統同士を容易に連系可能です。
- 交流送電では、送電線リアクタンスによる位相差が送電安定度の制約となりますが、直流ではリアクタンスの影響を受けないため、電線の熱的許容電流に至るまで安定して大電力を送電できます。
- 交流電流は周期的に零点(電流がゼロになる瞬間)を通過するため、このタイミングで遮断を行うことが容易です。しかし、直流電流は零点を持たないため、強制的に電流をゼロにする特殊な遮断器技術が必要となり、これが開発上の課題とされています。
- 前述の通り、同じ実効値で比較すると直流の最大値は交流の最大値よりも低くなるため、絶縁レベルを強化する必要があるという記述は事実に反します。
- 直流送電では送受電端で交直変換が必要であり、特に他励式変換器(サイリスタ変換器など)では動作原理上、高調波が発生するため、交流系統への影響を抑えるためのフィルタ設置などの対策が不可欠です。
直流電圧の波形と交流電圧の波形における最大値と実効値の関係を重ねてみると、絶縁に求められる強度の違いが見えてきます。