令和7年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 問30 解説 問3 問3
問3 次のa)~e)の文章は,汽力発電所の保護装置に関する記述である。これらの文章の内容について,適切なものと不適切なものの組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。a) 蒸気タービンの回転速度が定格を超える一定値以上に上昇すると,自動的に蒸気止弁を閉じて,タービンを停止する非常調速機が設置されている。b) ボイラ水の循環が円滑に行われないとき,水管の焼損事故を防止するため,燃料を遮断してバーナを消火させる燃料遮断弁が設置されている。c) 負荷の緊急遮断等によって,ボイラ内の蒸気圧力が一定限度を超えたとき,蒸気を放出させて機器の破損を防ぐため,蒸気加減弁が設置されている。d) 蒸気タービンの軸受油圧が異常低下したとき,タービンを停止させるトリップ装置が設置されている。e) 発電機固定子巻線の内部短絡を検出・保護するために,比率差動継電器が設置されている。
- (1) 適切 適切 不適切 適切 不適切
- (2) 不適切 不適切 適切 適切 不適切
- (3) 不適切 不適切 不適切 不適切 適切
- (4) 適切 適切 不適切 適切 適切 ✓ 正答
- (5) 不適切 適切 適切 不適切 適切
解説
汽力発電所では、設備を異常から保護し、事故の拡大を防ぐために多様な保護装置が設置されており、設問中の記述はcが不適切で他がすべて適切であるため、正答は(4)となります。
蒸気タービンの過速防止と非常調速機
蒸気タービンは高速で回転する機器であり、定格回転速度を超えて過度に上昇すると、遠心力によって翼や回転体が破壊される危険があります。これを防ぐための装置が非常調速機(オーバー・スピード・トリップ)です。回転速度が定格の一定割合(通常10~12%増)に達したことを検知すると、直ちに蒸気止弁(主蒸気遮断弁)を強制的に閉鎖し、タービンへの蒸気供給を断って回転を停止させます。
ボイラの燃料遮断と蒸気圧力の制御
ボイラは、内部の水が循環することで熱を吸収し、効率よく蒸気を発生させています。ボイラ水の循環が停滞すると、管内に蒸気溜まりが生じ、局所的な過熱による水管の焼損事故に至ります。これを未然に防ぐため、循環異常を検知した際には、燃料遮断弁を閉じて速やかにバーナを消火し、加熱を止めます。
また、蒸気圧力の制御については、負荷遮断などでボイラ内の圧力が許容範囲を超えて上昇した場合、これを外部へ放出して機器の破裂を防ぐ装置が必要です。この役割を担うのは「安全弁」であり、蒸気加減弁ではありません。蒸気加減弁は、負荷の変動に応じてボイラからタービンへ流入する蒸気量を調整し、出力を制御する弁です。この両者は、過圧保護と出力制御という全く異なる目的で設置されています。
タービン軸受油圧の保護
蒸気タービンの回転軸は高速で回るため、軸受には常に潤滑油が供給されていなければなりません。軸受油圧が何らかの理由で異常低下すると、軸と軸受が直接接触し、焼き付き事故を引き起こします。これを検知して即座にタービンを停止させるトリップ装置が設置されており、機器の重大損傷を防ぐ重要な保護機能となっています。
発電機の内部故障保護
発電機内部の短絡事故は、発生した故障電流がそのまま固定子巻線を損傷させ、深刻な被害をもたらします。これを保護する標準的な手法が「差動保護方式」です。比率差動継電器は、発電機の保護区間の入口と出口で電流を比較し、その差が一定の比率を超えた場合に内部短絡と判断して遮断器を動作させます。この装置は、外部故障による通過電流と内部故障による差電流を正確に区別できるため、発電機保護に広く用いられています。
保護装置の機能と判断
個別の保護装置が、発電所内のどのような現象を検知し、どのように設備を守っているかを整理します。
- タービンの回転速度上昇を検知する非常調速機は、蒸気止弁を閉じて過速を防ぐため、記述aは適切です。
- ボイラ水管の焼損を防ぐために燃料を遮断するのは、燃料遮断弁の役割であるため、記述bは適切です。
- ボイラの蒸気圧力異常上昇時に蒸気を放出して破裂を防ぐ装置は安全弁であり、出力調整用の蒸気加減弁ではないため、記述cは不適切です。
- 軸受の焼き付きを防ぐため、油圧低下を検知してタービンを止めるのは、保護のためのトリップ装置の役割であるため、記述dは適切です。
- 発電機巻線内部の短絡を検出する装置として、比率差動継電器が設置されているため、記述eは適切です。
各保護装置が想定している「異常状態」と「その結果として動く弁や継電器」の動きを重ねてみると、汽力発電所全体を巡る安全の仕組みが見えてきます。