令和7年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 問30 解説 問3 問3
問3 三相かご形誘導機に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) 同じ容量の三相巻線形誘導機よりも構造が簡単で,安価である。
- (2) 発電機として,一部の水力発電や風力発電に採用されている。
- (3) 発電運転中の滑りは負となる。
- (4) 大容量の電動機にはアルミダイカスト回転子が広く用いられている。 ✓ 正答
- (5) 回転子に棒状の導体を用いている三相かご形誘導機は,同じ容量の三相巻線形誘導機よりも機械的に過酷な使用に耐えられる。
解説
三相かご形誘導機の大容量機において回転子の導体にはアルミダイカストではなく銅バーが一般的に用いられるため、選択肢(4)の記述が誤りです。
かご形回転子の構造と製造方法
誘導機の回転子には、主に「かご形」と「巻線形」の2種類があります。かご形誘導機は、回転子鉄心の溝に導体(バー)を挿入し、両端を端絡環(エンドリング)で短絡した構造をしています。この導体部分の製造方法には、主に以下の2つの方式があります。
- アルミダイカスト方式:溶融したアルミニウムを回転子鉄心の溝に流し込み、一度の工程で導体と端絡環を一体成形する方式です。形状が単純で製造コストが低いため、小形から中形程度の電動機において主流となっています。
- 銅バー方式:あらかじめ加工された銅の導体を鉄心の溝に挿入し、両端の端絡環と溶接やろう付けで固定する方式です。アルミに比べて導電率が高く、また接合部を強固にできるため、大きなトルクや熱ストレスが発生する大容量の電動機に採用されます。
誘導機の運転状態と滑りの関係
誘導機の運転状態を決定づける指標に「滑り(スリップ)」があります。滑り は、同期速度 と回転子速度 の差を同期速度で割った値()で表されます。
- 電動機として運転する場合:回転子の速度は同期速度より遅いため、 となり、滑りは から の正の値をとります。
- 発電機として運転する場合:外部から動力を与えて回転子を同期速度以上に加速させると、 となります。このとき、滑りの式において分母は正ですが分子が負となるため、滑りは負の値となります。
三相かご形誘導機の特性判断
各選択肢を提示された性質に基づいて整理します。
- かご形誘導機は、巻線形のように外部に抵抗を接続するためのスリップリングやブラシが不要です。そのため、回転子の構造が単純かつ頑丈で、製造コストも安価という特徴があります。
- 誘導機を発電機として用いる場合、同期速度を超えて回転させることで負の滑りとなり、電力を系統に送り返すことが可能です。この特性は、比較的小規模な水力発電や風力発電機に利用されています。
- 発電運転では回転子が同期速度を超えて回転するため、滑りが負になるという性質に従っています。
- 大容量機では、大電流が流れることに伴う熱や電磁力に対して十分な強度と導電率が求められます。アルミダイカストは中・小容量機に限定される手法であり、大容量機には銅バーを用いた構造が採用されています。
- 巻線形誘導機は回転子に絶縁された巻線を施しているため、構造が複雑で過酷な環境下での機械的な強度はかご形に劣ります。かご形は導体が鉄心と強固に一体化されているため、物理的な衝撃や熱的な負荷に対して高い耐性を持っています。
アルミダイカストの製造上の制限と、大容量機に求められる導体材料の特性を重ねてみると、回転子の構造の適材適所が見えてきます。