令和7年度第三種電気主任技術者上期試験 理論科目 問100 解説 問10 問10
問10 図の回路のスイッチSをt=0sで閉じる。電流iS[A]の波形として最も適切に表すものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、スイッチSを閉じる直前に、回路は定常状態にあったとする。
- (1)
- (2)
- (3) ✓ 正答
- (4)
- (5)
解説
スイッチSを閉じた瞬間、インダクタには定常状態から引き継いだ0Aの電流が流れ始め、コンデンサに蓄えられていた1Vの電圧がスイッチを通じて放出されるため、電流は1Aから立ち上がり、その後、過渡現象を経て定常状態の電流値へ落ち着く(3)の波形となります。
過渡現象と回路素子の性質
直流回路における過渡現象の解析では、インダクタ(コイル)とコンデンサの性質を理解することが不可欠です。インダクタは磁界のエネルギーを蓄える素子であり、流れる電流を急激に変化させることができません。この性質を「電流連続の法則」と呼び、スイッチの開閉前後でインダクタを流れる電流の値を維持しようとします。
一方、コンデンサは電界のエネルギーを蓄える素子であり、両端の電圧を急激に変化させることができません。これを「電圧連続の法則」と呼びます。定常状態とは、これらの素子がエネルギーの蓄積を終え、時間的に電圧や電流が変化しなくなった状態を指します。このとき、インダクタは短絡(抵抗0Ωの導線)として、コンデンサは開放(絶縁体)として振る舞います。
回路の状態変化の解析
スイッチSを閉じる前後で、回路は次のように振る舞います。
スイッチを閉じる前の定常状態では、インダクタは短絡、コンデンサは開放されています。電源電圧1Vが抵抗と開放されたコンデンサの直列回路にかかるため、コンデンサの両端電圧は電源電圧と同じ1Vに保たれています。このときインダクタには電流が流れていないため、インダクタ電流は0Aです。
スイッチSを閉じた瞬間(s)、インダクタは電流連続の法則により、直前と同じ0Aから電流を流し始めます。このとき、回路内に存在する1Vの電圧を保持したコンデンサは、閉じたスイッチに向かって電荷を放出しようとします。この放電電流がスイッチSを通る電流 の初期値を形成します。抵抗値が1Ωであることから、オームの法則により が初期電流となります。
時間が経過するにつれて、電源から供給される電流がインダクタを通り始め、徐々にインダクタ電流が増加します。同時に、コンデンサの電圧は低下していきます。これらの変化が重なり合うことで、回路の電流は1Aから少し増減しつつ、最終的な定常状態に向けて収束していく挙動を示します。
インダクタを流れる電流の立ち上がりと、コンデンサが放電する瞬間の電流値を重ねてみると、スイッチを閉じた直後の鋭い変化が見えてきます。