令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 問110 解説 問11
巻上機によって質量1000kgの物体を毎秒0.5mの一定速度で巻き上げているときの電動機出力の値[kW]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,機械効率は90%,ロープの質量及び加速に要する動力については考慮しないものとする。
- 0.6
- 4.4
- 4.9
- 5.5 ✓ 正答
- 6.0
解説
質量1000kgの物体を毎秒0.5mの一定速度で巻き上げる際に必要な位置エネルギーの変化率(軸出力4.9kW)に対し、機械効率90%による損失を考慮して電動機出力を逆算すると約5.44kWとなり、最も近い値は5.5(選択肢5.5)です。
運動と仕事率の関係およびエネルギー保存の法則
物理において、単位時間あたりに行われる仕事の量を仕事率と呼び、単位にはワット [W] やキロワット [kW](1kW = 1000W)が用いられます。物体を一定の速度で移動させ続けるとき、加える力 [N] と移動速度 [m/s] の積によって仕事率 [W] を求めることができます。
重力環境下において、質量 [kg] の物体を一定の速度で鉛直上方に引き上げる場合、物体に働く重力とつり合う力が必要となります。重力加速度を [m/s](標準値として を使用)とすると、引き上げるために必要な力 [N] は次のように表されます。
一方、エネルギー保存の法則に基づき、入力されたエネルギーと出力されるエネルギーの総和は常に等しく保たれますが、現実の移動機構や電動機では摩擦抵抗や熱としてエネルギーの一部が失われます。投入された全動力のうち、実際の仕事として利用された割合を表す指標が機械効率 です。
物体を実際に持ち上げるのに必要な動力を軸出力 [kW]、その動力を生み出すために電動機に要求される動力を電動機出力 [kW] とすると、機械効率 (1未満の小数またはパーセンテージ)を用いて以下の関係が成り立ちます。
これを電動機出力 について変形すると次の式になります。
機械効率が存在する場合、損失の分だけ軸出力よりも大きな入力(電動機出力)が必要になります。
巻上機における電動機出力の計算
質量 の物体を重力に抗して引き上げるために必要な力 [N] を計算します。重力加速度 を用いると次のようになります。
毎秒 の一定速度で物体を巻き上げるために必要な仕事率(軸出力 [kW])を求めます。 選択肢にある 4.9 は、この段階の「機械効率による損失を考慮する前の軸出力」の値であり、機械効率が 100% でない場合には電動機出力そのものとはなりません。
機械効率 を考慮し、損失を含めて電動機が供給すべき出力 [kW] を算出します。 得られた計算結果 5.444 kW に最も近い選択肢の数値は 5.5 です。
巻上機に働く重力の大きさと引き上げる速度、そして機械効率によるエネルギー損失の割合を重ねてみると、電動機から供給されたエネルギーが物体を動かす力へ変換される流れが見えてきます。