第三種電気主任技術者試験 / 令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 / 各問題解説 / 問120
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令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 問120 解説 問12

リチウムイオン二次電池と比較した電気二重層キャパシタの特徴に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. エネルギー密度[J/kg]が小さい。
  2. 出力密度[W/kg]が大きい。
  3. 充放電の繰り返しによる劣化のため,寿命が短い。 ✓ 正答
  4. 自己放電による電圧の低下が速い。
  5. 急速充電が可能である。

解説

電気二重層キャパシタは化学反応を伴わないイオンの物理的な吸着と脱離によって充放電を行うため繰り返しの充放電による劣化が極めて小さく寿命が長いことから、「充放電の繰り返しによる劣化のため,寿命が短い。」とする記述が誤りとなります。

電気二重層キャパシタと二次電池の動作原理と特性

電気二重層キャパシタとリチウムイオン二次電池は、ともに電気エネルギーを蓄えて再利用するデバイスですが、電荷を蓄積する物理・化学的メカニズムが大きく異なります。

リチウムイオン二次電池は、電極活物質とリチウムイオンの間で酸化還元反応を生じさせるファラデー過程を利用しています。ファラデーの電解の法則が示す通り、物質の変化量と移動する電荷量は直接対応しており、電極の内部深くにある物質まで化学反応に参加します。このため、質量や体積あたりの蓄電量であるエネルギー密度を非常に大きくできます。しかし、充放電のたびに物質の結晶構造が膨張・収縮して物理的な歪みが残るほか、副反応による物質の変質が起きるため、充放電を繰り返すと性能が低下し寿命を迎えます。また、化学反応の進行速度には極限があるため、短時間で大きなパワーを出し入れする出力密度には限界があります。

これに対して電気二重層キャパシタは、活性炭などの固体電極と電解液の境界に形成される「電気二重層」に、イオンが静電気力で吸着・脱離する非ファラデー過程を利用しています。これは電界に伴う電荷の配置変化のみを利用する現象であり、物質の化学変化を伴いません。

電極表面へのイオンの物理的な吸脱着だけで動作するため、充放電を繰り返しても電極材料の構造破壊がほとんど起こりません。その結果、数十万回以上の充放電サイクルに耐える極めて長い寿命を備えています。加えて、イオンの表面移動は化学反応よりも遥かに高速であるため、内部抵抗が非常に小さく、急速な充電や瞬時に大電流を取り出す高い出力密度を実現できます。

一方で、電荷を保持できる領域が電極の「表面」に限られるため、物質の「内部」全体を活用するリチウムイオン二次電池に比べてエネルギー密度は小さくなります。また、電極表面に並んだイオンは熱運動や微小な漏れ電流の影響で離脱しやすいため、自己放電が速く、放電に伴って端子電圧が直線的に下降するという性質も持っています。

リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの特性比較

  1. 充放電のメカニズムから寿命を判断します。電気二重層キャパシタは化学反応を起こさず電極表面でのイオンの物理的な吸着と脱離のみで動作するため、充放電による物質の劣化が極めて少なく寿命は非常に長いです。したがって、寿命が短いとする記述は誤りです。

  2. 電荷蓄積の範囲からエネルギー密度と出力密度を判断します。キャパシタは電極の比表面積にのみ電荷を蓄えるため単位質量あたりのエネルギー密度は小さいですが、化学反応の遅れがないため瞬時に大きな電力を出せる出力密度は非常に大きくなります。したがって、エネルギー密度が小さく出力密度が大きいとする記述は正しいです。

  3. イオンの応答性と保持状態から自己放電と充電速度を判断します。電極表面に物理吸着したイオンは脱離しやすく自己放電による電圧低下が速いですが、イオンの移動速度自体はきわめて速いため急速充電が可能です。したがって、自己放電による電圧低下が速く急速充電が可能であるとする記述は正しいです。

電極表面の広大な比表面積と、そこに整列するイオンの挙動をイメージしてみると、化学反応に頼らないキャパシタ特有の高速性と高耐久性の理由が見えてきます。

参考リンク

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