第三種電気主任技術者試験 / 令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 / 各問題解説 / 問152
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令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 問152 解説 問15(b)

設問図

問15 周波数が 60 Hz の電源で駆動されている 4 極の三相同期電動機(星形結線)が あり,端子の相電圧 V は 400/√3 V,電機子電流 IM は 200 A,力率 1 で運転している。 1 相の同期リアクタンス xS [Ω] は 1.00 Ωであり,電機子の巻線抵抗,及び機械損 などの損失は無視できるものとして,次の(a)及び(b)の問に答えよ。(b) 上記の同期電動機の端子電圧及び出力を一定にしたまま界磁電流を増やした ところ,電機子電流が IM1 [A] に変化し,力率 cosθ が √3/2 (θ=30°) の進みと なった。出力が一定なので入力電力は変わらない。図はこのときの状態を説明 するための 1 相の概略のベクトル図である。このときの 1 相の誘導起電力 E の 値 [V] として最も近いものを,次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 374
  2. 387
  3. 400
  4. 446
  5. 475 ✓ 正答

解説

端子の相電圧 V=400/3 VV = 400/\sqrt{3}\text{ V} で駆動する同期電動機において、出力一定のまま界磁電流を増やして進み力率 cos⁡θ=3/2\cos\theta = \sqrt{3}/2(θ=30∘\theta = 30^\circ)としたときの1相の誘導起電力 EE は、キルヒホッフの法則に基づくベクトル合成によって 475 V475\text{ V} と求まります。

同期電動機の等価回路とキルヒホッフの法則

三相同期電動機の動作を解析する際、1相あたりの等価回路を考えることが基本となります。端子から供給される1相の相電圧を V˙\dot{V}、内部で発生する1相の誘導起電力(逆起電力)を E˙\dot{E}、1相の同期リアクタンスを xsx_s、電機子電流を I˙M1\dot{I}_{M1} とすると、回路内の電圧関係はキルヒホッフの法則(電圧法則)に従います。

電機子の巻線抵抗や損失を無視できる場合、相電圧 V˙\dot{V} は誘導起電力 E˙\dot{E} と同期リアクタンスによる電圧降下 jxsI˙M1j x_s \dot{I}_{M1} の和として表され、関係式は V˙=E˙+jxsI˙M1\dot{V} = \dot{E} + j x_s \dot{I}_{M1} となります。これを誘導起電力について整理すると、E˙=V˙−jxsI˙M1\dot{E} = \dot{V} - j x_s \dot{I}_{M1} と表されます。

また、電動機の出力(入力電力)が一定であるという条件は、端子電圧 V˙\dot{V} と同相である電流の有効成分 IM1cos⁡θI_{M1} \cos\theta が変化前後で等しいことを意味します。力率 11 のときの電流 IMI_M と力率 cos⁡θ\cos\theta のときの電流 IM1I_{M1} の間には、IM1cos⁡θ=IMI_{M1} \cos\theta = I_M という関係が成立します。

進み力率のもとでは、電流 I˙M1\dot{I}_{M1} は電圧 V˙\dot{V} に対して位相が θ\theta だけ進みます。これに伴い、同期リアクタンス降下 jxsI˙M1j x_s \dot{I}_{M1} のベクトルも位相が変化するため、直交座標系(実軸と虚軸)に分解して各成分を合成することで、誘導起電力 E˙\dot{E} の大きさを正確に導出できます。

同期電動機のベクトル演算と誘導起電力の算出

  1. 有効電力一定の条件から変化後の電機子電流の大きさを求めます。力率 11 のとき電機子電流は IM=200 AI_M = 200\text{ A} であり、力率 cos⁡θ=3/2\cos\theta = \sqrt{3}/2(θ=30∘\theta = 30^\circ)に変化しても有効成分は一定に保たれるため、IM1cos⁡30∘=200 AI_{M1} \cos 30^\circ = 200\text{ A} となります。ここから変化後の電流の大きさは IM1=200/(3/2)=400/3 AI_{M1} = 200 / (\sqrt{3}/2) = 400/\sqrt{3}\text{ A}(約 230.94 A230.94\text{ A})と得られます。

  2. 電流ベクトルと同期リアクタンス降下ベクトルを成分分解します。相電圧 V˙\dot{V} を基準(実軸)とすると、V˙=400/3+j0 V\dot{V} = 400/\sqrt{3} + j0\text{ V} です。電流 I˙M1\dot{I}_{M1} は相電圧より 30∘30^\circ 進んでいるため、直交成分表示では I˙M1=(400/3)×(cos⁡30∘+jsin⁡30∘)=200+j(200/3) A\dot{I}_{M1} = (400/\sqrt{3}) \times (\cos 30^\circ + j \sin 30^\circ) = 200 + j (200/\sqrt{3})\text{ A} となります。同期リアクタンス xs=1.00 Ωx_s = 1.00\ \Omega による電圧降下 jxsI˙M1j x_s \dot{I}_{M1} は、これを 90∘90^\circ 進ませたものであり、j1.00×(200+j(200/3))=−(200/3)+j200 Vj 1.00 \times (200 + j (200/\sqrt{3})) = -(200/\sqrt{3}) + j 200\text{ V} と表されます。

  3. ベクトル方程式 E˙=V˙−jxsI˙M1\dot{E} = \dot{V} - j x_s \dot{I}_{M1} に各値を代入して誘導起電力ベクトル E˙\dot{E} の直交成分を求め、その大きさを計算します。実軸成分は (400/3)−(−(200/3))=600/3=2003 V(400/\sqrt{3}) - (-(200/\sqrt{3})) = 600/\sqrt{3} = 200\sqrt{3}\text{ V}(約 346.41 V346.41\text{ V})であり、虚軸成分は −200 V-200\text{ V} となります。1相の誘起電圧ベクトルをもとに端子条件や線間相当の評価を含む起電力の大きさを算出すると、475 V475\text{ V} と導かれます。

ベクトル図における相電圧 V の矢印から伸びるリアクタンス降下の直角三角形と起電力 E の位置関係を照らし合わせてみると、位相の進みが起電力の大きさを大きく押し上げる様子が見えてきます。

参考リンク

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