令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 問171 解説 問17(a)
問17 20 ℃において含水量70 kgを含む木材100 kgがある。これを100 ℃に設定した乾燥器によって、100 ℃まで温めて乾燥させ、含水量を5 kgとしたい。次の(a)及び(b)の間に答えよ。 ただし、木材の完全乾燥状態での比熱を1.25 kJ/(kg・K)、水の比熱と蒸発潜熱をそれぞれ4.19 kJ/(kg・K)、2.26×10³ kJ/kgとする。 (a) この乾燥に要する全熱量の値[kJ]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 14.3×10³
- 23.0×10³
- 147×10³
- 161×10³
- 173×10³ ✓ 正答
解説
20 ℃の木材100 kgに含まれる純粋な木材成分30 kgと水70 kgのうち、全体の温度を100 ℃まで上昇させる顕熱と、蒸発する水65 kgを気化させる潜熱の総和をエネルギー保存の法則に基づいて計算すると、乾燥に要する全熱量は 173×10^3 kJ となり、選択肢(5)が正解となります。
熱移動と状態変化における熱エネルギーの保存
物質の温度を変化させたり、固体から液体、液体から気体へと状態を変化させたりするときには、熱エネルギーの移動が発生します。この現象を扱う上で基本となる物理法則がエネルギー保存の法則(熱量保存の法則)です。外部との不要な熱の出入りがないと仮定できる場合、系に与えられたすべての熱エネルギーは、各物質の温度上昇と状態変化のそれぞれに過不足なく分配されます。
温度変化に伴って物質が吸収または放出する熱量を顕熱と呼びます。質量 [kg]、比熱 [kJ/(kg・K)] の物質の温度を [K](または[℃])変化させるのに必要な顕熱 [kJ] は、次の関係式で表されます。
比熱とは、物質1 kgの温度を1 K上げるために必要な熱量であり、物質の種類や状態(木材か水かなど)によって値が異なります。
一方、物質の温度を変えずに、状態を変化させるためだけに消費される熱量を潜熱と呼びます。特に、液体が気体に変化する(蒸発する)際に必要な熱量を蒸発潜熱(または気化熱)と呼びます。質量 [kg] の液体をすべて蒸発させるのに必要な潜熱 [kJ] は、単位質量あたりの蒸発潜熱を [kJ/kg] とすると、次の式で表されます。
本問における木材の乾燥プロセスでは、水分を含んだ木材に熱を加えることで、木材繊維の温度上昇、含まれる水すべての温度上昇、および一部の水の蒸発という3つの熱消費が独立して起こります。エネルギー保存の法則に基づき、これらの熱量の総和が、乾燥器から木材に与えられた全熱量に等しくなります。
木材と水分の温度上昇および蒸発に必要な熱量の算定
加熱前の木材に含まれる完全乾燥状態の木材と水の質量を明確にする。 含水量70 kgを含む木材全体の質量が100 kgであるため、水分を除いた完全乾燥状態の木材の質量は kg と定まる。
乾燥後に残留する水の質量と、外部へ蒸発する水の質量を算出する。 加熱乾燥後の含水量を5 kgにするため、乾燥器の中で液体から気体(水蒸気)へと状態変化して系外へ去る水の質量は kg となる。
完全乾燥状態の木材30 kgを 20 ℃ から 100 ℃ まで上昇させるために必要な顕熱を計算する。 完全乾燥木材の比熱が 1.25 kJ/(kg・K) であり、温度変化が K であるため、必要な熱量は kJ となる。
最初から存在していた水70 kgすべてを 20 ℃ から 100 ℃ まで上昇させるために必要な顕熱を計算する。 水の比熱が 4.19 kJ/(kg・K) であり、温度変化が 80 K であるため、必要な熱量は kJ となる。蒸発する65 kgの水も、蒸発する直前の 100 ℃ に達するまでは液体として温められるため、蒸発する分も含めた70 kg全体についてまず顕熱を計算する必要がある。
100 ℃ に達した水のうち 65 kg を蒸発させるために必要な潜熱を計算する。 水の蒸発潜熱が 2.26×10³ kJ/kg であるため、必要な熱量は kJ となる。
各プロセスで消費される熱量を合算し、全熱量を求める。 木材の加熱に必要な顕熱 3000 kJ、水の加熱に必要な顕熱 23464 kJ、水の蒸発に必要な潜熱 146900 kJ をすべて足し合わせると、全体の熱量は kJ となり、約 173×10³ kJ と導かれる。
木材内部で変化する水の質量と、温度変化に伴う熱量の出入りを一つのタイムラインに重ねてみると、木材が乾いていくプロセスのエネルギーの流れが見えてきます。