令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 問50 解説 問5
次の文章は,三相同期発電機に関する記述である。\n三相同期発電機は,水車を原動機とする水車発電機や,蒸気タービンを原動機とするタービン発電機などに用いられている。水車発電機では,水車の回転速度が比較的 (ア) ため,発電機の極数を (イ) しなければならない。また,水車発電機の回転子は,軸方向に比べて直径が (ウ) なっている。\nタービン発電機の回転子は,水車発電機に比べて回転速度が (エ) ので,回転子の機械的強度の関係から,回転子の直径は軸方向の長さに比べて (オ) した設計になっている。\n\n上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (ア)小さい, (イ)小さく, (ウ)大きく, (エ)大きい, (オ)大きく
- (ア)小さい, (イ)大きく, (ウ)大きく, (エ)大きい, (オ)小さく ✓ 正答
- (ア)小さい, (イ)大きく, (ウ)大きく, (エ)大きい, (オ)大きく
- (ア)大きい, (イ)大きく, (ウ)小さく, (エ)小さい, (オ)小さく
- (ア)大きい, (イ)小さく, (ウ)小さく, (エ)小さい, (オ)大きく
解説
三相同期発電機において、水車の回転速度が小さいため定格周波数を得るには極数を大きくする必要があり、低速で巨大な径をもつ突極形回転子となる水車発電機に対し、高速回転するタービン発電機は遠心力を抑えるため直径を軸長に対して小さく設計した非突極形をとることから、正答の組み合わせは(ア)小さい、(イ)大きく、(ウ)大きく、(エ)大きい、(オ)小さくとなります。
同期速度の法則と機械的強度による形状制限
同期発電機が発生する交流電圧の周波数 [Hz]、極数 、回転速度 [min] の間には、同期速度の法則から導かれる以下の関係式が成立します。
日本の商用電源周波数は 50 Hz または 60 Hz に固定されているため、原動機(水車やタービン)の回転速度 が決まると、発生させる周波数を一致させるために必要な発電機の極数 が一義的に定まります。回転速度が低ければ同じ周波数を得るために多くの磁極(大きな極数)が必要となり、逆に回転速度が高ければ少ない極数で定格周波数に達します。
また、回転子が回転する際には、外周部に大きな遠心力が作用します。回転子の半径を 、角速度を とすると、回転子表面にかかる遠心力は に比例します。遠心力は回転速度の2乗および回転子の半径(直径)に比例して増大するため、高速で回転する機器ほど外周にかかる機械的ストレスが急増します。
このため、低速回転の水車発電機では遠心力の影響が小さく、多数の磁極を円周上に並べるために直径を大きく、軸方向には短い扁平な突極形(凸極形)構造が採用されます。一方、高速回転のタービン発電機では強大な遠心力に耐える必要があり、直径を小さく抑えて遠心力を低減し、必要な磁束量を確保するために軸方向に長い非突極形(円筒形・平滑形)構造が用いられます。
三相同期発電機における各パラメータの決定
水車発電機の回転速度と極数の決定 原動機である水車は水力特性に応じた比較的低い回転速度で運転されるため、(ア)には「小さい」が入ります。周波数を系統の定格値に合わせるには、同期速度の式 に基づき極数 を増やす必要があるため、(イ)には「大きく」が入ります。
水車発電機の回転子形状の確定 極数が大きくなると、多数の磁極を回転子の外周に配置するためのスペースが必要となります。水車発電機は回転速度が低く遠心力による破断のリスクが小さいため、円周上に磁極を突出させて並べる突極形が用いられ、軸方向の長さに比べて直径が(ウ)「大きく」なった扁平な形状となります。
タービン発電機の回転速度と機械的強度の関係 蒸気タービンやガスタービンは高圧の気体で直接駆動されるため回転速度が非常に(エ)「大きく」、2極または4極といった最小限の極数で運転されます。高速回転に伴う強い遠心力から回転子の破断を防ぐため、機械的強度を確保する目的で直径を制限する必要があります。
タービン発電機の回転子形状の確定 遠心力を低減するために直径を小さく抑える一方、発電出力に必要な磁束の通路(鉄心体積)を確保するため、回転子の軸方向の長さを長く伸ばした非突極形構造が用いられます。これにより、回転子の直径は軸方向の長さに比べて(オ)「小さく」設計されます。
水車とタービンの回転速度の違いと、それぞれの回転子の外観形状を並べて比較してみると、遠心力に対抗するための構造的な工夫が見えてきます。