第三種電気主任技術者試験 / 令和8年度 上期 第3種 理論 / 各問題解説 / 問80
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令和8年度 上期 第3種 理論 問80 解説 問8

設問図

図のような RC 交流回路がある。この回路に正弦波交流電圧 E [V] を加えたとき, 容量性リアクタンス 6 Ω のコンデンサの端子間電圧の大きさは 12 V であった。このとき, E [V] と図の破線で囲んだ回路で消費される電力 P [W] の値として, 正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

  1. E[V]: 20, P[W]: 96 ✓ 正答
  2. E[V]: 20, P[W]: 32
  3. E[V]: 28, P[W]: 168
  4. E[V]: 28, P[W]: 120
  5. E[V]: 40, P[W]: 309

解説

容量性リアクタンス6Ωのコンデンサの端子間電圧が12Vであるという条件と、回路図の抵抗値、リアクタンス値から、オームの法則とベクトル合成を用いて電源電圧Eを20Vと特定できます。続いて、消費電力は抵抗成分のみで発生するという交流回路の性質に基づき各枝路の消費電力を計算して合計すると96Wとなるため、Eが20V、Pが96Wである選択肢(1)が正解となります。

交流回路における電力とインピーダンスの基礎

交流回路では、抵抗、コイル(リアクトル)、コンデンサ(キャパシタ)といった素子それぞれが交流電流に対して異なる振る舞いをします。この問題では抵抗とコンデンサが含まれるRC交流回路について考えます。

  • 抵抗(R): 交流電流が流れると、その大きさに比例して電圧降下が発生し、ジュール熱として電力を消費します。 抵抗にかかる電圧と流れる電流は位相が同じです。
  • コンデンサ(C): 交流電流が流れると、電荷の蓄積と放出を繰り返すことで電流の流れを妨げます。この妨げの大きさを「容量性リアクタンス(XCX_C)」と呼びます。コンデンサは電力を消費しません。コンデンサにかかる電圧は流れる電流に対して90度遅れます。
  • インピーダンス(Z): 抵抗とリアクタンス(コイルやコンデンサによる電流の妨げ)を合わせた、交流回路における電流の流れにくさを表す量です。抵抗とリアクタンスは位相が異なるため、単純に足し算はできず、ベクトル的に合成します。抵抗RRと容量性リアクタンスXCX_Cが直列に接続された回路のインピーダンスの大きさは、Z=R2+XC2Z = \sqrt{R^2 + X_C^2} で計算されます。

オームの法則の交流回路への適用: 直流回路と同様に、交流回路でもオームの法則が成り立ちます。すなわち、回路に流れる電流の大きさIIは、回路にかかる電圧の大きさVVをその回路のインピーダンスの大きさZZで割ることで求められます。I=V/ZI = V / Z。 また、各素子にかかる電圧も、その素子を流れる電流とその素子の抵抗値やリアクタンス値との積で求められます。例えば抵抗にかかる電圧はVR=I×RV_R = I \times R、コンデンサにかかる電圧はVC=I×XCV_C = I \times X_Cです。

消費電力(有効電力)の計算: 交流回路で実際に消費される電力(有効電力)は、抵抗成分のみで発生します。コイルやコンデンサといったリアクタンス成分では電力が消費されません。したがって、消費電力PPは、抵抗RRに流れる電流IIを使って P=I2RP = I^2 R で計算できます。あるいは、抵抗RRにかかる電圧VRV_Rを使えば P=VR2/RP = V_R^2 / R とも表せます。 この問題の回路は電源に対して2つの枝路が並列に接続されています。並列回路では、各枝路には同じ電圧がかかります。回路全体の消費電力は、各枝路で消費される電力の合計となります。

RC交流回路の各部電圧・電流と消費電力の計算

設問のRC交流回路は、電源Eに対して2つの枝路が並列に接続されています。左側の枝路は8Ωの抵抗と6Ωのコンデンサが直列に、右側の枝路は4Ωの抵抗と3Ωのコンデンサが直列に接続されています。

  1. 左側の枝路の電流と電源電圧Eの算出

    • 問題文より、左側の枝路にある容量性リアクタンスXC1=6 ΩX_{C1} = 6 \ \Omega のコンデンサにかかる電圧VC1V_{C1}が12Vであることが与えられています。
    • この枝路を流れる電流の大きさI1I_1は、オームの法則により I1=VC1/XC1=12 V/6 Ω=2 AI_1 = V_{C1} / X_{C1} = 12 \ \text{V} / 6 \ \Omega = 2 \ \text{A} です。
    • 同じ電流I1I_1が、直列接続されている抵抗R1=8 ΩR_1 = 8 \ \Omega にも流れます。この抵抗にかかる電圧VR1V_{R1}は、VR1=I1×R1=2 A×8 Ω=16 VV_{R1} = I_1 \times R_1 = 2 \ \text{A} \times 8 \ \Omega = 16 \ \text{V} です。
    • 抵抗にかかる電圧とコンデンサにかかる電圧は位相が90度ずれるため、この枝路にかかる電源電圧Eの大きさは、三平方の定理を用いてベクトル的に合成した値となります。 E=VR12+VC12=162+122=256+144=400=20 VE = \sqrt{V_{R1}^2 + V_{C1}^2} = \sqrt{16^2 + 12^2} = \sqrt{256 + 144} = \sqrt{400} = 20 \ \text{V}。
    • これにより、電源電圧Eは20Vであることが確定します。
  2. 左側の枝路で消費される電力P1P_1の算出

    • 左側の枝路で消費される電力は、抵抗R1R_1でのみ発生します。
    • P1=I12R1=(2 A)2×8 Ω=4×8=32 WP_1 = I_1^2 R_1 = (2 \ \text{A})^2 \times 8 \ \Omega = 4 \times 8 = 32 \ \text{W} です。
  3. 右側の枝路の電流と消費電力P2P_2の算出

    • 並列回路であるため、右側の枝路にも電源電圧E = 20Vがかかります。
    • 右側の枝路の抵抗R2=4 ΩR_2 = 4 \ \Omega と容量性リアクタンスXC2=3 ΩX_{C2} = 3 \ \Omega が直列に接続されています。この枝路のインピーダンスZ2Z_2は、 Z2=R22+XC22=42+32=16+9=25=5 ΩZ_2 = \sqrt{R_2^2 + X_{C2}^2} = \sqrt{4^2 + 3^2} = \sqrt{16 + 9} = \sqrt{25} = 5 \ \Omega です。
    • 右側の枝路を流れる電流の大きさI2I_2は、オームの法則により I2=E/Z2=20 V/5 Ω=4 AI_2 = E / Z_2 = 20 \ \text{V} / 5 \ \Omega = 4 \ \text{A} です。
    • 右側の枝路で消費される電力P2P_2は、抵抗R2R_2でのみ発生します。
    • P2=I22R2=(4 A)2×4 Ω=16×4=64 WP_2 = I_2^2 R_2 = (4 \ \text{A})^2 \times 4 \ \Omega = 16 \times 4 = 64 \ \text{W} です。
  4. 回路全体で消費される電力Pの算出

    • 回路全体で消費される電力Pは、各枝路で消費される電力P1P_1とP2P_2の合計です。
    • P=P1+P2=32 W+64 W=96 WP = P_1 + P_2 = 32 \ \text{W} + 64 \ \text{W} = 96 \ \text{W} です。

これらの計算結果から、電源電圧Eは20V、回路で消費される電力Pは96Wとなり、選択肢(1)が正しいことがわかります。

図の左側枝路に注目し、コンデンサの電圧とリアクタンスから電流を求めるところから始め、直列接続された抵抗での電圧降下をベクトル的に合成して全体の電圧Eを導出する流れを辿ると、このRC交流回路の振る舞いが見えてきます。

参考リンク

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