第三種電気主任技術者試験 / 令和8年度 上期 第3種 理論 / 各問題解説 / 問90
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令和8年度 上期 第3種 理論 問90 解説 問9

設問図

図のように抵抗,コイル,コンデンサからなる負荷がある。この負荷に線間電圧 Vab = 100∠0° [V],Vbc = 100∠0° [V],Vca = 200∠0° [V] の単相3線式交流電源を接続したところ,端子 a,端子 b,端子 c を流れる線電流はそれぞれ Ia [A],Ib [A] 及び Ic [A] であった。Ia [A],Ib [A],Ic [A] の大きさをそれぞれ Ia [A],Ib [A],Ic [A] としたとき,これらの大小関係を表す式として,正しいものを次の (1) ~ (5) のうちから一つ選べ。

  1. Ia > Ib > Ic
  2. Ib > Ia > Ic
  3. Ia = Ic > Ib
  4. Ib > Ic > Ia
  5. Ia > Ic > Ib ✓ 正答

解説

この問題では、単相3線式交流電源に接続された負荷の各線電流の大きさを比較します。各負荷に流れる枝電流を交流のオームの法則と複素インピーダンスを用いて計算し、求めた枝電流をキルヒホッフの電流則に従って合成することで線電流を特定できます。その結果、Ia>Ic>IbI_a > I_c > I_b となるため、選択肢(5)が正答です。

交流回路における基本的な法則と計算

この問題を解く上で理解すべき基本的な概念と法則は以下の通りです。

単相3線式回路の電圧関係

単相3線式は、2本の幹線(ライブ線)と1本の中性線(ニュートラル線)で構成される配電方式です。この方式では、幹線と中性線の間、および2本の幹線間それぞれに電圧が得られます。 問題文の Vab=100∠0∘V_{ab} = 100\angle0^\circ [V]、Vbc=100∠0∘V_{bc} = 100\angle0^\circ [V]、Vac=200∠0∘V_{ac} = 200\angle0^\circ [V] という条件は、端子bが中性線であり、端子aとcがライブ線であることを示しています。 このような場合、端子bの電位を基準(0∠0∘0\angle0^\circ V)とすると、端子aの電位は 100∠0∘100\angle0^\circ V、端子cの電位は −100∠0∘-100\angle0^\circ V と考えることができます。この電位差によって、各負荷に電圧が印加されます。

複素インピーダンスと交流のオームの法則

交流回路において、抵抗 (R)、コイル (L)、コンデンサ (C) は電流の流れを妨げる作用を持ち、これをインピーダンス (Z) と呼びます。直流回路の抵抗に相当しますが、コイルとコンデンサは周波数によってその妨げ方が変わる(リアクタンス X)とともに、電流と電圧の間に位相差を生じさせます。 インピーダンスは複素数で表され、Z=R+jXZ = R + jX の形式で表現されます。ここで jj は虚数単位です。

  • 抵抗 (R) のインピーダンスは RR (実数部のみ)
  • コイル (L) のインピーダンスは jωLj\omega L となり、問題文では「Ω\Omega」表記でリアクタンスが与えられているため jXLjX_L と表現します。 (XL=ωLX_L = \omega L)
  • コンデンサ (C) のインピーダンスは 1/(jωC)=−j/(ωC)1/(j\omega C) = -j/( \omega C) となり、同様に −jXC-jX_C と表現します。 (XC=1/(ωC)X_C = 1/(\omega C))

交流回路におけるオームの法則は、これらのインピーダンスを用いて I=V/ZI = V/Z と表されます。ここで VV は電圧、 II は電流も複素数で表現します。電流の「大きさ」を求める場合は、複素数で得られた電流 I=Ireal+jIimagI = I_{real} + jI_{imag} に対して ∣I∣=Ireal2+Iimag2|I| = \sqrt{I_{real}^2 + I_{imag}^2} を計算します。

キルヒホッフの電流則 (KCL)

キルヒホッフの電流則は、回路網の任意の分岐点(ノード)において、流れ込む電流の総和と流れ出す電流の総和は等しい、という法則です。この問題では、端子a、b、cに流れ込む、または流れ出す枝電流(負荷を流れる電流)を合成して、各線の線電流を求めるときに適用します。

線電流の大きさを決定する手順

1. 単相3線式電源の電圧関係の確認

問題文より、線間電圧は Vab=100∠0∘V_{ab} = 100\angle0^\circ [V]、Vbc=100∠0∘V_{bc} = 100\angle0^\circ [V]、Vac=200∠0∘V_{ac} = 200\angle0^\circ [V] です。 これは、端子bを基準電位 0∠0∘0\angle0^\circ V とすると、

  • 端子aの電位は 100∠0∘100\angle0^\circ V (Va=100∠0∘V_a = 100\angle0^\circ V)
  • 端子cの電位は −100∠0∘-100\angle0^\circ V (Vc=−100∠0∘V_c = -100\angle0^\circ V) と設定できます。これにより、各負荷の両端にかかる電圧が明確になります。

2. 各負荷のインピーダンスの計算

各負荷は抵抗とリアクタンスの直列接続で構成されています。

  • a-b間の負荷 (ZabZ_{ab}): 抵抗 3Ω3\Omega とコイル 4Ω4\Omega の直列 Zab=3+j4Z_{ab} = 3 + j4 [Ω\Omega] 大きさ ∣Zab∣=32+42=9+16=25=5|Z_{ab}| = \sqrt{3^2 + 4^2} = \sqrt{9+16} = \sqrt{25} = 5 [Ω\Omega] 位相角 θab=arctan⁡(4/3)≈53.13∘\theta_{ab} = \arctan(4/3) \approx 53.13^\circ
  • b-c間の負荷 (ZbcZ_{bc}): コンデンサ 3Ω3\Omega と抵抗 4Ω4\Omega の直列 Zbc=4−j3Z_{bc} = 4 - j3 [Ω\Omega] (コンデンサのリアクタンスは負の虚数で表される) 大きさ ∣Zbc∣=42+(−3)2=16+9=25=5|Z_{bc}| = \sqrt{4^2 + (-3)^2} = \sqrt{16+9} = \sqrt{25} = 5 [Ω\Omega] 位相角 θbc=arctan⁡(−3/4)≈−36.87∘\theta_{bc} = \arctan(-3/4) \approx -36.87^\circ
  • a-c間の負荷 (ZacZ_{ac}): 抵抗 8Ω8\Omega とコイル 6Ω6\Omega の直列 Zac=8+j6Z_{ac} = 8 + j6 [Ω\Omega] 大きさ ∣Zac∣=82+62=64+36=100=10|Z_{ac}| = \sqrt{8^2 + 6^2} = \sqrt{64+36} = \sqrt{100} = 10 [Ω\Omega] 位相角 θac=arctan⁡(6/8)≈36.87∘\theta_{ac} = \arctan(6/8) \approx 36.87^\circ

3. 各負荷に流れる枝電流の計算

交流のオームの法則 I=V/ZI = V/Z を用いて、各枝に流れる電流 iab,ibc,iaci_{ab}, i_{bc}, i_{ac} を計算します。電流の位相角の計算には、arctan⁡(X/R)\arctan(X/R) の値を利用します。(cos⁡(53.13∘)=0.6,sin⁡(53.13∘)=0.8\cos(53.13^\circ)=0.6, \sin(53.13^\circ)=0.8 および cos⁡(36.87∘)=0.8,sin⁡(36.87∘)=0.6\cos(36.87^\circ)=0.8, \sin(36.87^\circ)=0.6 を利用します。)

  • iabi_{ab} (aからbへ流れる電流): iab=Vab/Zab=(100∠0∘)/(5∠53.13∘)=20∠−53.13∘i_{ab} = V_{ab} / Z_{ab} = (100\angle0^\circ) / (5\angle53.13^\circ) = 20\angle-53.13^\circ [A] 直交座標形式: iab=20(cos⁡(−53.13∘)+jsin⁡(−53.13∘))=20(0.6−j0.8)=12−j16i_{ab} = 20(\cos(-53.13^\circ) + j\sin(-53.13^\circ)) = 20(0.6 - j0.8) = 12 - j16 [A] 大きさ ∣iab∣=20|i_{ab}| = 20 [A]

  • ibci_{bc} (bからcへ流れる電流): ibc=Vbc/Zbc=(100∠0∘)/(5∠−36.87∘)=20∠36.87∘i_{bc} = V_{bc} / Z_{bc} = (100\angle0^\circ) / (5\angle-36.87^\circ) = 20\angle36.87^\circ [A] 直交座標形式: ibc=20(cos⁡(36.87∘)+jsin⁡(36.87∘))=20(0.8+j0.6)=16+j12i_{bc} = 20(\cos(36.87^\circ) + j\sin(36.87^\circ)) = 20(0.8 + j0.6) = 16 + j12 [A] 大きさ ∣ibc∣=20|i_{bc}| = 20 [A]

  • iaci_{ac} (aからcへ流れる電流): iac=Vac/Zac=(200∠0∘)/(10∠36.87∘)=20∠−36.87∘i_{ac} = V_{ac} / Z_{ac} = (200\angle0^\circ) / (10\angle36.87^\circ) = 20\angle-36.87^\circ [A] 直交座標形式: iac=20(cos⁡(−36.87∘)+jsin⁡(−36.87∘))=20(0.8−j0.6)=16−j12i_{ac} = 20(\cos(-36.87^\circ) + j\sin(-36.87^\circ)) = 20(0.8 - j0.6) = 16 - j12 [A] 大きさ ∣iac∣=20|i_{ac}| = 20 [A]

4. キルヒホッフの電流則による線電流の計算

図に示された線電流 Ia,Ib,IcI_a, I_b, I_c の矢印の向きに注意して、キルヒホッフの電流則を各端子に適用します。

  • 端子aの線電流 IaI_a: 端子aには線電流 IaI_a が流入し、枝電流 iabi_{ab} と iaci_{ac} が流出しています。 Ia=iab+iacI_a = i_{ab} + i_{ac} Ia=(12−j16)+(16−j12)=(12+16)+(−16−12)j=28−j28I_a = (12 - j16) + (16 - j12) = (12+16) + (-16-12)j = 28 - j28 [A] 大きさ ∣Ia∣=282+(−28)2=2×282=282≈39.59|I_a| = \sqrt{28^2 + (-28)^2} = \sqrt{2 \times 28^2} = 28\sqrt{2} \approx 39.59 [A]

  • 端子bの線電流 IbI_b: 端子bには枝電流 iabi_{ab} が流入し、枝電流 ibci_{bc} と線電流 IbI_b が流出しています。(図のIbI_bは負荷側からbへ向かう向きを示しているので、流出として扱います。) iab=ibc+Ib  ⟹  Ib=iab−ibci_{ab} = i_{bc} + I_b \implies I_b = i_{ab} - i_{bc} Ib=(12−j16)−(16+j12)=(12−16)+(−16−12)j=−4−j28I_b = (12 - j16) - (16 + j12) = (12-16) + (-16-12)j = -4 - j28 [A] 大きさ ∣Ib∣=(−4)2+(−28)2=16+784=800=400×2=202≈28.28|I_b| = \sqrt{(-4)^2 + (-28)^2} = \sqrt{16 + 784} = \sqrt{800} = \sqrt{400 \times 2} = 20\sqrt{2} \approx 28.28 [A]

  • 端子cの線電流 IcI_c: 端子cには枝電流 ibci_{bc} と iaci_{ac} が流入し、線電流 IcI_c が流出しています。(図のIcI_cも負荷側からcへ向かう向きを示しているので、流出として扱います。) Ic=ibc+iacI_c = i_{bc} + i_{ac} Ic=(16+j12)+(16−j12)=(16+16)+(12−12)j=32+j0=32I_c = (16 + j12) + (16 - j12) = (16+16) + (12-12)j = 32 + j0 = 32 [A] 大きさ ∣Ic∣=32|I_c| = 32 [A]

5. 線電流の大きさの比較

計算で求めた各線電流の大きさを比較します。

  • ∣Ia∣≈39.59|I_a| \approx 39.59 [A]
  • ∣Ib∣≈28.28|I_b| \approx 28.28 [A]
  • ∣Ic∣=32|I_c| = 32 [A]

これらの値から、大小関係は Ia>Ic>IbI_a > I_c > I_b となります。

各線間の電圧と負荷のインピーダンスに着目し、各枝電流をオームの法則で求めてから、キルヒホッフの電流則でまとめると、線電流の具体的な大きさとその関係性が見えてきます。

参考リンク

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