平成26年度 上期 学科試験 問7 解説 単相3線式の電圧変化
図のような単相3線式配電線路において、 負荷抵抗は10[Ω]一定である。スイッチA を閉じ、スイッチBを開いているとき、図中 の電圧Vは100[V]であった。この状態から スイッチBを閉じた場合、電圧Vはどのよう に変化するか。 ただし、電源電圧は一定で、電線1線当たり の抵抗r[Ω]は3線とも等しいものとする。
- イ. 約2[V]下がる。
- ロ. 約2[V]上がる。 ✓ 正答
- ハ. 変化しない。
- ニ. 約1[V]上がる。
解説
この問題の最短攻略法
この問題は、単相3線式回路における中性線の役割を理解しているかどうかが鍵です。
- スイッチAのみ閉じたとき、負荷電流 は上側の電線から中性線へ流れます。このとき中性線にも電流 が流れるため、電圧降下が発生し、電圧 は電源電圧より低くなります。
- スイッチBも閉じると、上下の負荷が並列接続のような状態になり、負荷電流は上下に分かれます。負荷が平衡(上下とも10Ω)するため、中性線に流れる電流は打ち消し合ってゼロになります。
- 中性線の電流がゼロになれば、中性線の電圧降下もゼロになり、負荷端の電圧 は上昇します。
単相3線式回路と中性線の挙動
単相3線式は、2本の電圧線と1本の中性線からなる配電方式です。この回路の重要な性質は、中性線に流れる電流 が、上側の負荷電流 と下側の負荷電流 の差()になるという点です。
電線に抵抗 がある場合、電流が流れるとオームの法則に従って電圧降下()が生じます。スイッチAのみ閉じた状態では、上側の電線と中性線に電流 が流れ、合計 分の電圧降下が起きています。スイッチBを閉じて上下の負荷が平衡状態になると、中性線の電流がなくなるため、中性線での電圧降下が消滅します。結果として、負荷端で利用できる電圧は高くなります。
電圧変化を導く思考のステップ
この問題を論理的に解くには、回路の状態を「負荷電流のバランス」で捉えるのが近道です。
まず、スイッチAのみ閉じたときの電流を とします。このとき電源電圧を [V] とすると、 [V] ですから、電圧降下分は [V] です。 回路は から電線抵抗 、負荷 [Ω]、中性線抵抗 を経て戻る形ですので、電圧降下の式は [V] となり、 [V] すなわち [V] が導かれます。
次にスイッチBを閉じた場合を考えます。上下が平衡するため、各負荷には電流 が流れますが、中性線には電流が流れません。この場合、電圧 は電源電圧 から上側の電線抵抗による電圧降下 だけを引いた値となります。 平衡状態では となりますが、 は非常に小さいため [A] です。 最初の状態の電流 もほぼ [A] なので、電圧降下 はおよそ となります。先ほど [V] だったので、 も概ね [V] です。 したがって、スイッチAのみの時の電圧降下は [V](うち中性線で [V])、スイッチBも閉じた時の電圧降下は [V] となり、差し引き [V] の上昇となります。
実務における中性線の重要性
この問題が教えてくれる最も大切なことは、中性線が切断されたり、負荷の不平衡が大きすぎたりすると、負荷端にかかる電圧が不安定になるというリスクです。
例えば、片方の負荷が極端に大きくなると、中性線に大きな電流が流れ、電圧降下が激しくなります。さらに最悪のケースとして中性線が断線してしまうと、単相3線式の上下どちらかの回路に過電圧が加わり、接続されている家電製品が焼損する事故が発生することがあります。電気工事士として配線を行う際、中性線の接続を確実にすることは、回路の正常な動作だけでなく、機器の保護という点でも非常に重要です。