平成26年度 上期 学科試験 問9 解説 配電線路の力率改善
図のように三相電源から、三相負荷(定格電圧200[V]、定格消費電力20[kW]、遅れ力率0.8)に電気を供給している配電線路がある。図のように低圧進相コンデンサ(容量15[kvar])を設置して、力率を改善した場合の変化として、誤っているものは。 ただし、電源電圧は一定であるとし、負荷のインピーダンスも負荷電圧にかかわらず一定とする。なお、配電線路の抵抗は1線当たり0.1[Ω]とし、線路のリアクタンスは無視できるものとする。
- イ. 線電流Iが減少する。
- ロ. 線路の電力損失が減少する。
- ハ. 電源からみて、負荷側の無効電力が減少する。
- ニ. 線路の電圧降下が増加する。 ✓ 正答
解説
この問題は、進相コンデンサによる力率改善の効果を論理的に整理することで、計算せずとも正誤を判断できます。力率を改善すると線電流が減少するという基本的な性質を起点に、電流減少が引き起こす連鎖的な現象を追うことが解法の鍵です。
力率改善がもたらす現象の連鎖
力率改善とは、誘導性負荷(遅れ力率)によって発生する無効電力を、進相コンデンサによって打ち消す行為です。この結果、線路を流れる無効電流が減るため、以下の順序で現象が発生します。
- 無効電流の減少により、全体の線電流 が減少する。
- 線電流の減少により、線路の電力損失 が減少する。
- 線電流の減少により、線路での電圧降下 が減少する。
この論理に基づくと、選択肢ニの「電圧降下が増加する」は、現象の結果と逆の記述であるため、誤りとなります。
なぜ電流が減ると電圧降下が改善するのか
電気回路において、電圧降下は線路抵抗 と流れる電流 の積で決まります。力率改善前は、負荷に供給するために必要な有効電力に加えて、大量の無効電流まで線路を通る必要がありました。進相コンデンサを負荷の近くに置くことで、無効電力の供給源が「電源」から「コンデンサ」に切り替わります。
これにより、電源から負荷に至るまでの線路には、有効電力分を運ぶための電流だけで済むようになります。電流が小さくなれば、当然ながら線路で消費される電圧降下分も小さくなり、負荷端にかかる電圧は改善(上昇)します。このため、「電圧降下が増加する」という選択肢は、電気工学的な観点から矛盾しているのです。
実務における力率改善の意義
この問題は、単なる試験用の知識にとどまらず、現場での実務と直結しています。工場などで力率が低いまま放置されると、不要な電流が線路を流れ続けることになり、以下のデメリットが生じます。
- 電線が発熱し、電力損失(電気代の無駄)が増える。
- 送電側の余裕が減り、同じ線路でより多くの負荷を接続できなくなる。
- 電圧降下が大きくなり、モーターなどが定格性能を発揮できなくなる。
第一種電気工事士の試験では、理論的な裏付けだけでなく、なぜ進相コンデンサを設置するのかという「目的」を問う問題が頻出します。力率改善は、電力の供給効率を上げ、設備全体を安定して運用するための極めて重要な技術的手段です。「力率改善=電流減少=損失減・電圧降下改善」という一連のセットを、論理的なパッケージとして記憶しておくことが合格への近道です。