平成30年度 筆記試験(追加試験分) 問32 解説 ケーブル引込口の施工
③で示すケーブルの引込口などに,必要以上の開口部を設けない主な理由は。
- イ. 火災時の放水,洪水等で容易に水が浸入しないようにする。
- ロ. 鳥獣類などの小動物が進入しないようにする。 ✓ 正答
- ハ. ケーブルの外傷を防止する。
- ニ. キュービクルの底板の強度を低下させないようにする。
解説
ケーブルの引込口に余分な隙間を作らない理由は、外部からネズミやヘビ、鳥などの小動物がキュービクル等の設備内部へ入り込むのを防ぐためです。電気設備において、生き物の侵入は短絡(ショート)や地絡といった重大な停電事故に直結するため、物理的な遮断が最優先されます。
事故の原因を物理的に遮断する
電気設備における開口部の管理は、異物混入を防ぐための最も基本的かつ重要な物理的対策です。ケーブルを導入するために設けた穴に必要以上の隙間があると、そこから小動物が容易に内部へ侵入してしまいます。
これら小動物が充電部に接触したり、導電性のある異物を持ち込んだりすると、相間短絡や対地地絡を引き起こします。特に高圧受電設備の場合、こうした事故は建物全体の停電だけでなく、電力会社の配電線路にまで影響を及ぼす波及事故に発展する恐れがあります。そのため、引込口には必要最小限の開口部のみを設け、余分な隙間はパテや専用の部材で確実に塞ぐことが技術基準や内線規程においても重要視されています。
電気設備を脅かす鳥獣害のリスク
自家用電気工作物は屋外に設置されることが多く、野生動物にとっては格好の住処や避難所になり得ます。選択肢にある他の要素と比較しながら、なぜ小動物対策が主眼となるのかを整理します。
まず、浸水対策(イ)やケーブルの損傷防止(ハ)も重要ではありますが、これらは防水パッキンの使用やブッシングの装着といった別の手法で解決されるべき問題です。また、底板の強度(ニ)についても、ケーブル引込口程度の穴が構造全体の強度に致命的な影響を与えることは通常ありません。
現場で最も頻繁に発生し、かつ対策を怠ると防げないのが小動物による事故です。ネズミが電線をかじって絶縁を破壊したり、ヘビが端子間にまたがって橋渡しのような状態になり短絡させたりする事例は、保守管理の現場では珍しくありません。この現実的なリスクを排除することが、開口部を最小限にする最大の目的です。
現場での施工と点検に活きる知識
この問題は、実際の電気工事や保守点検の現場で「なぜ隙間を埋める作業が不可欠なのか」という実務上の意図を理解しているかを問うています。
施工においては、ケーブルを敷設した後に開口部を専用のシール材や防鼠パテで埋める作業を止水・防護処理と呼びます。これは単に見栄えを良くするためのものではなく、設備の信頼性を担保するための工程です。
また、第一種電気工事士が携わるような大規模な設備の点検時には、これらのパテが劣化して剥がれていないか、あるいは隙間から動物の糞や足跡が見られないかを確認することが、事故を未然に防ぐ重要なチェック項目となります。物理的な隙間を管理することは、電気的な絶縁を維持することと同じくらい、設備の安全運用において不可欠な視点です。