平成30年度 筆記試験(追加試験分) 問34 解説 受電設備の定期点検
⑤で示す受電設備の維持管理に必要な定期点検で通常行わないものは。
- イ. 接地抵抗の測定
- ロ. 絶縁抵抗の測定
- ハ. 保護継電器試験
- ニ. 絶縁耐力試験 ✓ 正答
解説
受電設備の保守点検において、通常行われる定期点検と、新設時や事故後などの特別な節目に行われる試験を区別することが正解への近道です。定期点検は設備の劣化状態を診断し、事故を未然に防ぐために継続的に実施されるものであり、設備に過度な負荷をかけない項目が中心となります。一方で、絶縁耐力試験は非常に高い電圧を印加する過酷な試験であるため、毎年のように行う定期点検には含まれません。
定期点検で実施される標準的な項目
電気事業法に基づく保安規定により、受電設備は定期的な点検が義務付けられています。選択肢にある項目のうち、以下の3つは定期点検における必須項目といえます。
接地抵抗の測定は、万が一の漏電時に電流を安全に大地へ逃がし、感電事故や火災を防ぐための接地極が有効に機能しているかを確認します。接地線が断線したり、土壌の乾燥などで抵抗値が上昇したりしていないかをチェックします。
絶縁抵抗の測定は、電路や機器の絶縁状態が悪化していないかを確認するものです。メガー(絶縁抵抗計)を用いて、漏電の予兆がないかを診断します。これは低圧回路だけでなく、高圧回路の非充電部との間でも行われます。
保護継電器試験は、落雷や短絡などの異常が発生した際に、遮断器を正しく動作させて事故の波及を防ぐための継電器(リレー)が、設定通りに作動するかを確認する試験です。リレー試験器を用いて、電流や電圧の模擬信号を入力し、動作時間や感度を測定します。
絶縁耐力試験が定期点検に含まれない理由
絶縁耐力試験は、その電路の最大使用電圧に応じた試験電圧(高圧受電設備であれば、通常は最大使用電圧の1.5倍の電圧)を10分間印加し、絶縁が破壊されないことを確認する試験です。この試験は、機器やケーブルにとって非常に大きなストレスとなります。
もし定期点検のたびにこの試験を行ってしまうと、かえって絶縁体の劣化を早め、設備の寿命を縮めてしまう恐れがあります。そのため、この試験が実施されるのは主に以下のようなタイミングに限定されます。
- 受電設備の新設時(完成検査)
- 主要な機器(変圧器や高圧ケーブルなど)の更新・交換時
- 大規模な修理を行った後
- 重大な絶縁事故が発生し、復旧の可否を判断する必要がある時
このように、絶縁耐力試験は設備のスペックが公的な基準を満たしているかを証明するための関門のような役割を持っており、日常的な健康診断にあたる定期点検とは性質が異なります。
現場管理における試験項目の重要性
第一種電気工事士は、大規模な工場の受電設備やビル等の保守管理に携わる機会が多くあります。試験においてこうした区別を問う意図は、単に用語を暗記しているかではなく、それぞれの試験が設備に与える影響と実施の目的を理解しているかを確認することにあります。
実務においては、定期点検の結果から絶縁抵抗値の低下傾向を読み取り、手遅れになる前に清掃や部品交換を提案する能力が求められます。一方、絶縁耐力試験を行う際には、試験によってトランスや計器用変成器に過電圧がかからないよう適切に切り離しを行うなど、高度な現場判断が必要になります。
それぞれの点検・試験が「維持管理のための現状把握」なのか「品質保証のための限界テスト」なのかを整理して覚えることで、この種の問題は容易に判断できるようになります。