第一種電気工事士試験 / 平成30年度 筆記試験(追加試験分) / 問35
certification-simodake-work

平成30年度 筆記試験(追加試験分) 問35 解説 絶縁耐力試験

高圧電路の絶縁耐力試験の実施方法に関する記述として,不適切なものは。

  1. イ. 最大使用電圧が 6.9 kV の CV ケーブルを直流 10.35 kV の試験電圧で実施する。 ✓ 正答
  2. ロ. 試験電圧を印加後,連続して 10 分間に満たない時点で試験電源が停電した場合は,試験電源が復電後,試験電圧を再度連続して 10 分間印加する。
  3. ハ. 一次側 6 kV,二次側 3 kV の変圧器の一次側巻線に試験電圧を印加する場合,二次側巻線を一括して接地する。
  4. ニ. 定格電圧 1 000 V の絶縁抵抗計で,試験前と試験後に絶縁抵抗測定を実施する。

解説

高圧受電設備の竣工検査や定期点検において、最も重要かつ神経を使う作業の一つが高圧絶縁耐力試験です。この問題は、試験電圧の選定と実施手順の正確な知識を問うています。誤りを見抜く最大のポイントは、交流で試験を行う場合と直流で行う場合の電圧値の違いにあります。

交流と直流で異なる試験電圧の計算

高圧絶縁耐力試験において、最大使用電圧が7,000V以下の電路(今回の6.9kVなど)に対する試験電圧は、原則として最大使用電圧の1.5倍の交流電圧を10分間印加することと定められています。

しかし、ケーブルのように対地静電容量が大きい対象物に交流で試験を行うと、大きな充電電流が流れるため、非常に大容量で高価な試験装置が必要になります。これを避けるために認められているのが直流による試験です。

直流で試験を行う場合、試験電圧は交流の試験電圧の2倍に設定しなければなりません。今回のケースで計算すると以下のようになります。

  1. 最大使用電圧:6.9 kV
  2. 交流での試験電圧:6.9 kV×1.5=10.35 kV6.9 \text{ kV} \times 1.5 = 10.35 \text{ kV}
  3. 直流での試験電圧:10.35 kV×2=20.7 kV10.35 \text{ kV} \times 2 = 20.7 \text{ kV}

選択肢イでは、直流試験であるにもかかわらず電圧が10.35kVとなっており、交流の規定電圧そのままの値になっています。この電圧値の設定が不適切であるため、イが正解(不適切な記述)となります。

試験の中断と継続のルール

選択肢イの後半部分にある「停電などで中断した場合は、復電後に再度連続して10分間印加する」という手順自体は、実務上の正しいルールです。

絶縁耐力試験は、対象となる絶縁体に一定のストレスを10分間「連続して」与え、破壊が起きないことを確認する試験です。もし5分経過した時点で電源が落ちてしまった場合、残りの5分だけ追加しても、それは「連続した10分間」の証明にはなりません。そのため、いかなる理由であれ中断した場合は、最初から10分間をやり直す必要があります。

試験前後の絶縁抵抗測定の意義

選択肢ハにある「試験前後に絶縁抵抗測定を実施する」という手順は、事故を防ぎ、試験結果の信頼性を担保するために不可欠な工程です。

試験前に1,000V絶縁抵抗計(メガー)を使用するのは、いきなり高電圧を印加しても安全な状態かどうかを確認するためです。もし試験前の時点で絶縁抵抗が著しく低い場合、耐力試験を強行すると機器を完全に破壊したり、火災を招いたりする恐れがあるため、試験を中止しなければなりません。

また、試験後に測定を行うのは、高電圧の印加によって絶縁体に目に見えないダメージ(微細な絶縁破壊など)が生じていないかを確認するためです。耐力試験をパスした直後に絶縁抵抗が低下している場合、その機器は近いうちに故障するリスクが高いため、詳細な調査が必要になります。

実務における判断のポイント

第一種電気工事士として現場に立つ際、こうした数値の暗記以上に重要なのは「なぜ直流なら2倍の電圧が必要なのか」という背景を理解しておくことです。

交流電圧の10.35kVというのは実効値であり、そのピーク値(最大値)は 10.35×214.6 kV10.35 \times \sqrt{2} \fallingdotseq 14.6 \text{ kV} に達しています。直流は常に一定の電圧がかかり続けるため、交流のピーク値によるストレスと同等の効果を得るためには、交流実効値よりもかなり高い電圧をかける必要があるというのが基本的な考え方です。

電気設備技術基準の解釈において、交流の1.5倍に対して直流はそのさらに2倍(つまり最大使用電圧の3倍)と定められているのは、この安全率と物理的特性を考慮した結果です。現場で試験器の設定を間違えることは致命的なミスに繋がるため、試験方式と倍率の関係は確実に整理しておく必要があります。

参考リンク

学習の記録にははてなブックマーク!

気づいたこと・覚えたことをコメントにメモしよう