平成30年度 第一種 筆記試験 問21 解説 高調波の発生源
高調波の発生源とならない機器は。
- イ. 交流アーク炉
- ロ. 半波整流器
- ハ. 進相コンデンサ ✓ 正答
- ニ. 動力制御用インバータ
解説
高調波の発生源は、電流と電圧の関係が直線的ではない「非線形負荷」であるかを判断する。各選択肢の機器が線形負荷か非線形負荷かを見極めることで、高調波を発生させない機器を特定できる。
高調波とは何か
電力系統における高調波とは、商用電源の基本波(日本では50Hzまたは60Hz)に対して、その整数倍の周波数を持つ電流や電圧の波形成分のことです。本来、理想的な正弦波であるべき電圧や電流の波形がひずんでいる状態を指します。
このひずみは、主として「非線形負荷」と呼ばれる種類の機器が接続されることで発生します。
高調波の発生源となる非線形負荷
非線形負荷とは、入力電圧と出力電流の関係が比例的(線形的)ではない負荷のことです。電圧が正弦波であっても、流れる電流の波形がひずみ、結果として基本波以外の周波数成分(高調波)が発生します。
問題の選択肢の中から、代表的な非線形負荷とそれが高調波を発生させる理由を見ていきましょう。
交流アーク炉
アーク炉は、電極間で発生させるアーク放電の熱を利用して金属を溶解する装置です。アーク放電は電圧と電流の関係が複雑で、非線形な特性を持ちます。特にアークの点弧・消弧時や電流の変動に伴い、急峻な電流変化が生じやすく、これが高調波の大きな発生源となります。
半波整流器(およびその他の整流器)
整流器は、交流を直流に変換する回路です。半波整流器は交流の正または負の半サイクルのみを取り出して直流に変換するため、電流が断続的に流れます。この断続的な電流のオン/オフ動作が波形のひずみを引き起こし、高調波を発生させます。全波整流器やダイオードブリッジ整流器も同様に、スイッチング動作を伴うため高調波の発生源となります。
動力制御用インバータ
インバータは、直流を交流に変換したり、交流の周波数や電圧を制御したりする装置で、モーターの速度制御などに広く用いられます。内部では半導体スイッチング素子(IGBTなど)が高速でオン/オフを繰り返すことで交流を生成します。このスイッチング動作がまさに非線形であり、非常に多くの高調波(特に高次の高調波)を発生させます。
高調波の発生源とならない機器:進相コンデンサ
一方、進相コンデンサは、電力系統の力率改善のために設置される機器です。コンデンサは、電圧と電流の関係が線形である「線形負荷」に分類されます。つまり、正弦波の電圧が印加されれば、流れる電流も正弦波となります(ただし位相は90度進む)。
そのため、進相コンデンサ自体が高調波を発生させることはありません。しかし、既存の高調波が含まれる系統に接続された場合、コンデンサは高調波電流の経路となり、場合によっては系統のインダクタンス成分と共振して高調波電流や電圧を増幅させてしまうことがあります。この増幅によって過電流や過電圧が生じ、コンデンサが焼損したり、保護継電器が誤動作したりする原因となるため、高調波対策が必要とされます。
この問題では「発生源とならない機器」を問われているため、進相コンデンサが正解となります。
この知識が役立つ場面と問題の意図
第一種電気工事士として、高調波問題は現場で遭遇する可能性のある重要な課題の一つです。高調波は、機器の過熱、絶縁劣化、保護継電器の誤動作、通信障害、そして進相コンデンサの焼損など、様々な悪影響を及ぼします。
この問題は、電力系統における高調波発生源の基本的な理解を問うものです。どの機器が波形をひずませる原因となるのか、そしてどの機器が高調波の影響を受ける側なのかを明確に区別できることが重要です。進相コンデンサは高調波の「発生源」ではないものの、高調波によって「被害を受ける」可能性のある機器の代表格であり、その区別は現場での適切な診断や対策に直結します。
高調波対策としては、フィルタの設置(受動フィルタ、能動フィルタ)、高調波抑制対策の施された機器の導入、配線の工夫などがあります。これらの対策を適切に検討するためには、まず高調波がどこから発生しているのかを特定する知識が不可欠です。