令和3年度 下期 学科試験 問10 解説 誘導電動機の始動法
三相かご形誘導電動機の始動方法として、 用いられないものは。
- イ. 全電圧始動(直入れ)
- ロ. スターデルタ始動
- ハ. リアクトル始動
- ニ. 二次抵抗始動 ✓ 正答
解説
この問題は「電動機の種類(かご形か、巻線形か)」と「始動方法」の対応関係を知っていれば一瞬で解けます。結論を言えば、二次抵抗始動は「巻線形」専用の始動法であるため、かご形誘導電動機には使えません。
電動機の構造と始動法の関係
誘導電動機は、回転子(ローター)の構造によって大きく2種類に分類されます。それぞれの特徴が始動方法を決定づけています。
かご形誘導電動機は、回転子の鉄心スロットに銅棒を差し込み、両端を導体環で短絡した「かご」のような形状をしています。構造が頑丈で保守も容易ですが、回転子側に外部から抵抗を挿入することができません。そのため、始動時には固定子(ステータ)側から供給する電圧や電流を制御するしかありません。
一方、巻線形誘導電動機は、回転子に巻線が施されており、その巻線の端部をスリップリングを通じて外部の抵抗器に接続できます。これが「二次抵抗始動」の仕組みです。回転子回路に抵抗を入れることで、始動トルクを大きくしつつ始動電流を抑制できるという、この方式特有のメリットを享受できます。
選択肢の判定ロジック
今回の問題で挙げられた選択肢は、すべて誘導電動機の始動に関連するものですが、適用の可否は以下の通りです。
イ.全電圧始動(直入れ):電源電圧をそのまま印加する方法です。小容量のかご形誘導電動機で広く使われます。 ロ.スターデルタ始動:始動時に巻線をY結線にして電圧を下げ、加速後にデルタ結線に切り替える方法です。中容量のかご形誘導電動機で一般的です。 ハ.リアクトル始動:電源と電動機の間にリアクトルを挿入して電圧降下を利用し、始動電流を抑える方法です。かご形誘導電動機で用いられます。 ニ.二次抵抗始動:回転子の巻線回路に抵抗を挿入する手法。前述の通り、二次回路にアクセスできないかご形電動機には物理的に不可能です。
この知識が現場で意味すること
第一種電気工事士の試験において、この問題が出題される意図は、単なる知識の暗記を確認するだけでなく、実務における「機器の仕様理解」を問うことにあります。
現場で誘導電動機の始動方式を選定したり、既設設備の点検を行ったりする際、その電動機がどちらのタイプであるかを見極めるのは基本中の基本です。かご形誘導電動機に対して無理に二次抵抗器を接続しようとしても、そもそも結線箇所が存在しないため工事ができません。
また、スターデルタ始動やリアクトル始動は、電源容量が小さい場合や始動時の電圧降下を抑制したい場合に有効です。二次抵抗始動は、始動トルクを大きく確保したい巻線形電動機特有の強みを活かすためのものです。こうした方式の違いを理解しておくことは、設備の設計段階でのトラブルを未然に防ぐ重要な知見となります。