令和5年度 学科試験 問24 解説 許容電流の定義
600 V ビニル絶縁電線の許容電流(連続使用時)に関する記述として,適切なものは。
- イ. 電流による発熱により,電線の絶縁物が著しい劣化をきたさないようにするための限界の電流値。 ✓ 正答
- ロ. 電流による発熱により,絶縁物の温度が80℃となる時の電流値。
- ハ. 電流による発熱により,電線が溶断する時の電流値。
- ニ. 電圧降下を許容範囲に収めるための最大の電流値。
解説
許容電流の定義を正しく押さえる
この問題は、電気設備の技術基準における「許容電流」の定義を問う知識問題です。正解の根拠は「電線の絶縁物が劣化しない温度で使い続けることができる限界の電流」であるという点にあります。選択肢の中で、絶縁物の性能維持(劣化防止)という目的に直接触れている選択肢を選びます。
絶縁物と許容電流の関係
電気工事士試験において「許容電流」とは、電線に電流を流した際に発生するジュール熱によって、絶縁被覆が熱的ダメージを受けない上限の電流値を指します。
電線に電流を流すと、導体(銅線など)の電気抵抗により熱が発生します。この熱が外部へと効率よく放出されれば問題ありませんが、許容電流を超える大きな電流を流し続けると、電線内部の温度が上昇し続けます。すると、絶縁体であるビニル層が軟化・変形したり、化学的な劣化が急速に進んだりして、最終的には絶縁破壊を引き起こすリスクが生じます。
つまり、許容電流とは「ケーブルの寿命を縮めず、安全に電気を供給し続けるための設計上の限界点」なのです。
選択肢を分析する思考回路
試験会場で迷わないためには、以下の視点で選択肢をふるいにかけます。
・ロについて:600Vビニル絶縁電線(IVなど)の最高許容温度は、一般的に60℃です。80℃という数値は架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVケーブルなど)の基準であり、ビニル絶縁電線の定義としては不適切です。
・ハについて:電線の「溶断」は、過大な電流によって導体そのものが物理的に焼き切れる現象を指します。これは短絡(ショート)時などの異常な大電流で起こるものであり、日常的な使用における「許容電流」の概念とは異なります。
・ニについて:電圧降下は電線路の抵抗値と電流の大きさによって決まりますが、これは「電線の性能限界」ではなく「送電効率や機器の動作電圧」の話です。許容電流とは目的が異なります。
これらの検討により、絶縁物の劣化を食い止めるという「安全管理」の観点が述べられているイが唯一の正解となります。
実務における許容電流の活用
この知識は、現場での電線選定に不可欠です。例えば、機器の定格電流だけで電線を選ぶのではなく、周囲温度や電線の布設方法(何本を束ねるかなど)を考慮し、補正係数をかけて実際に流せる電流量を計算します。
もし許容電流を超えた電線を使用すれば、目に見えないところで絶縁被覆が少しずつ劣化し、将来的な漏電火災の原因となります。この試験問題は、単なる暗記項目ではなく「安全な電気設備を設計・施工するための基本原則」を理解しているかを確認するための重要な問いといえます。