令和7年度 上期 第一種 学科試験 (出題例) 問6 解説 三相回路の電圧降下
図のように、三相 4 線式配電線路に、定格電圧 400 V, 定格負荷電流 100 A (消費電力 52 kW), 遅れ力率 0.75 の三相負荷のみが接続されている。負荷の線間電圧 Vr を 400 V にするための、送電端の線間電圧 Vs [V] の値は。 ただし、電線 1 線当たりの抵抗は 0.04 Ω とし、線路リアクタンスは無視する。 なお、計算においては適切な近似式を用いるものとする。
- イ. 402
- ロ. 405 ✓ 正答
- ハ. 408
- ニ. 410
解説
この問題は、三相配電線路における「電圧降下の近似式」を適用して、送電端電圧を求める手順を理解しているかが問われます。
解法の流れは以下の通りです。
- 電圧降下の近似式 を用いる。
- 問題文より、リアクタンス 、抵抗 、電流 、受電端電圧 、力率 を代入する。
- 遅れ力率であるため、 となるが、今回は のため の値は計算に影響しない。
- 式に代入して計算すると、 となり、選択肢のロが正解となる。
電圧降下を決定づける要因
送電端電圧 と受電端電圧 の間には、線路のインピーダンスによる電圧降下が生じます。三相回路において、線間電圧ベースで近似的に表すと となります。
ここでのポイントは、電圧降下の大きさが「抵抗分によるもの」と「リアクタンス分によるもの」の和として決まる点です。抵抗分は力率 に比例し、リアクタンス分は無効分である に比例します。本問では線路リアクタンス が無視できるため、負荷がどれだけ誘導性であっても、線路による電圧降下には抵抗成分 のみが寄与するという特殊な状況になっています。
計算のプロセスと近似の意味
この問題を解く際の思考プロセスは、まず「どの式を使うべきか」という公式の選択に始まります。第一種電気工事士試験では、厳密なベクトル計算を行うよりも、実用的な近似式を利用することが求められます。
今回の式における は、単相回路ではなく「三相回路」であることを示しています。線間電圧での電圧降下を考える際、各相の電圧降下()を線間電圧に換算するために を掛ける必要があります。この構造を理解していれば、パラメータさえ整理すれば機械的に計算を導き出せるようになります。なお、今回の計算で求めた という値は、近似式を用いた結果として選択肢の中で最も近い を選ぶという、試験特有の導出プロセスを含んでいます。
実務現場における電圧管理の重要性
この知識は、実際の電気設備設計や保安管理の現場で、ケーブル選定や電圧維持のために不可欠なものです。
例えば、長距離の配線を行う場合、どれだけ太い電線を選定しても、負荷電流が大きければそれに応じた電圧降下が発生します。電圧が許容範囲を超えて低下すると、機器の誤動作やトルク不足、あるいは照明の照度低下を引き起こします。設計者は、この電圧降下計算を行うことで、変圧器の二次側電圧をあらかじめ高めに設定する(タップ調整を行う)べきか、あるいは電線の太さを上げて抵抗 を減らすべきかを判断します。
この問題のように、「送電端でいくらの電圧をかければ、受電端で必要な電圧を確保できるか」という逆算の思考は、安定した電力供給を維持するための基本的なエンジニアリング・スキルと言えます。