令和8年度上期 学科試験 問18 解説 アークホーンの役割
架空送電線路に使用されるアークホーンの 記述として,正しいものは。
- イ. 電線と同種の金属を電線に巻き付けて補強し,電線の振動による素線切れなどを防止する。
- ロ. 電線におもりとして取り付け,微風により生じる電線の振動を吸収し,電線の損傷などを防止する。
- ハ. がいしの両端に設け,がいしや電線を雷の異常電圧から保護する。 ✓ 正答
- ニ. 多導体に使用する間隔材で,強風による電線相互の接近・接触や負荷電流,事故電流による電磁吸引力から素線の損傷を防止する。
解説
この問題は、架空送電線路で使われるさまざまな金物の名称とその役割を正しく一致させられるかを問う内容です。選択肢にあるアークホーン、アーマロッド、ダンパ、スペーサといった部品は、第一種電気工事士の筆記試験において非常に出題されやすい頻出項目です。名称に含まれるアーク(電弧・放電)という言葉から、電気的なトラブル(雷など)から設備を保護する仕組みであることを連想するのが正解への近道です。
がいしを熱破壊から守る身代わりの電極
アークホーンは、送電鉄塔などにおいて電線を支持しているがいし(絶縁体)の両端に取り付けられる金属製の電極です。その最大の役割は、雷などの異常電圧が発生した際に、がいしそのものにダメージを与えないよう放電をコントロールすることにあります。
通常、がいしは高い絶縁性能を持っていますが、直撃雷や誘導雷によって非常に高い電圧が加わると、空気の絶縁を突き破って放電(フラッシオーバ)が発生します。このとき、もし放電の火花(アーク)がいしの表面に沿って流れてしまうと、その凄まじい熱によってがいしが割れたり、電線が溶断したりするおそれがあります。
アークホーンは、あえてがいしの絶縁距離よりも少し短い隙間を空けて配置されています。異常電圧が来たときには、がいし表面ではなく、アークホーンの先端同士で先に放電を起こさせることで、放電のルートを空気中に誘導し、重要設備であるがいしや電線を熱から守る仕組みになっています。
選択肢から読み解く送電線保護の周辺知識
この問題の他の選択肢は、いずれも送電線路に欠かせない重要な金物について記述しています。これらを整理して覚えることで、類似問題にも対応できるようになります。
イの記述にある電線と同種の金属を巻き付けて補強するものは、アーマロッド(Armor Rods)です。電線を支持点付近で補強し、振動による金属疲労や、万が一のアークによる損傷を軽減します。
ロの記述にあるおもりを取り付けて振動を吸収するものは、ダンパ(Damper)です。特に有名なのが野球のバットのような形をしたストックブリッジダンパで、微風振動による電線の断線を防ぐ役割があります。
ニの記述にある多導体の間隔を保持するものは、スペーサ(Spacer)です。複数の電線(素線)を束ねて使う多導体方式において、強風や事故時の大きな電流による吸引力で電線同士が接触・衝突するのを防ぎます。
現場視点での重要性と教育的意図
第一種電気工事士には、低圧だけでなく高圧や特別高圧の電気工作物に関する深い理解が求められます。架空送電線路は常に自然の脅威(雷、風、雪)にさらされており、それらに対してどのような物理的な対策が講じられているかを知ることは、保守点検の基本となります。
アークホーンの知識は、単に名前を覚えるだけでなく、絶縁調整という考え方を理解する第一歩です。すべての絶縁を完璧に固めるのではなく、あえて一部に放電しやすい場所(アークホーン)を作ることで、システム全体が致命的な故障に至るのを防ぐという思想が、この小さな部品に込められています。
こうした設備管理の視点は、変電所内での避雷器(アレスタ)の配置や、回路保護の優先順位を考える際にも共通する重要な概念です。試験では、これらの補助金物が物理的なダメージを防ぐもの(ダンパ、スペーサ)なのか、電気的なダメージを防ぐもの(アークホーン)なのかを明確に区別して整理しておきましょう。