平成21年度 秋期 ITパスポート試験 問23 解説 労働基準法と36協定
労働基準法において, 時間外及び休日の労働を認めるために規定されていることはどれか。
- ア 会社の就業規則が作成されていること
- イ 本人の労働意思が個別に確認されていること
- ウ 労使の協定を書面で締結し, 行政官庁に届け出ること ✓ 正答
- エ 割増賃金について, 支給細目が決まっていること
解説
正解への最短ルート
労働基準法で定められた「法定労働時間」を超えて働かせたり、休日に働かせたりするためには、使用者と労働者代表との間で書面による協定を締結し、それを労働基準監督署に届け出る必要があります。これは一般に「36協定(サブロク協定)」と呼ばれ、問題文の選択肢ウがこの手続きを正確に説明しています。
36協定の仕組みと役割
労働基準法では、労働時間を原則として1日8時間、1週40時間までと定めています(法定労働時間)。この制限を超える労働や、休日労働をさせることは原則として禁止されています。
しかし、業務の都合上、どうしても残業や休日出勤が必要になるケースは避けられません。そこで労働基準法第36条では、一定の要件を満たす場合に限り、その例外を認めています。この手続きの要点は以下の3点です。
- 労使協定の締結:会社(使用者)と労働者の過半数代表者との間で、時間外労働や休日労働についてのルールを合意する。
- 書面による作成:口約束ではなく、必ず書面(または電磁的記録)で協定を結ぶ。
- 届出:作成した協定書を、所轄の労働基準監督署長に届け出る。
これらを完了させて初めて、会社は法的なペナルティを受けることなく従業員に残業や休日労働をさせることが可能になります。
試験問題を読み解く思考プロセス
試験会場でこの問題に出会ったとき、以下の手順で正誤を判断します。
まず、問題文にある「時間外・休日労働を認めるために規定されていること」というフレーズから、法的な手続きが必要であると察知します。
次に選択肢を確認します。 アの「就業規則」は労働条件を定めたルールブックですが、それがあるだけで残業が可能になるわけではありません。 イの「本人の意思確認」は、過重労働防止などの観点からは重要ですが、法的に「残業をさせる許可」を得るための絶対的な要件ではありません。 ウの「労使協定の締結と届出」は、労働基準法第36条そのものの記述であり、明確な法的要件です。 エの「割増賃金」は、残業をさせた後に支払うべき対価の話であり、残業そのものを行うための事前手続きとは異なります。
これらの検討により、法的根拠となる手続きを説明しているウが正解であると導き出します。
実務やビジネスにおける意義
IT業界はプロジェクトの納期が集中しやすく、残業や休日出勤が発生しやすい環境にあります。そのため、36協定の重要性は非常に高いといえます。
もし企業が36協定を締結・届出せずに残業を強制すれば、それは違法労働となります。ITパスポート試験においてこの知識を問う意図は、単なる法令の暗記ではなく、ITエンジニアやプロジェクトマネージャとして、適切な労務管理がなされた環境で働く権利、あるいは管理職として守るべき法的義務についての認識を養うことにあります。特に、働き方改革関連法により残業時間の上限規制が厳格化されている現代では、この「36協定」の知識は実務に直結する必須教養といえます。