平成21年度 春期 ITパスポート試験 問9 解説 営業秘密の定義
不正競争防止法の営業秘密に該当するものはどれか。
- ア インターネットで公開されている技術情報を印刷し,部外秘と表示してファイリングした資料
- イ 限定された社員の管理下にあり,施錠した書庫に保管している,自社に関する不正取引の記録
- ウ 社外秘としての管理の有無にかかわらず,秘密保持義務を含んだ就業規則に従って勤務する社員が取り扱う書類
- エ 秘密保持契約を締結した下請業者に対し,部外秘と表示して開示したシステム設計書 ✓ 正答
解説
営業秘密と認められるための3つの条件
この問題を解くための鍵は、不正競争防止法が定義する営業秘密の3要件をチェックすることです。以下の条件をすべて満たしているものを選びます。
- 秘密管理性:秘密として管理されていること(アクセス制限や部外秘の表示など)
- 有用性:事業活動にとって有用な情報であること(技術や販売戦略など)
- 非公知性:公に知られていないこと(インターネットなどで誰でも見られない状態)
選択肢エは、秘密保持契約を締結し、「部外秘」と表示して開示していることから、秘密として厳格に扱われていることが明白です。したがって、これら3要件を満たし、営業秘密として保護対象になります。
営業秘密の定義を掘り下げる
不正競争防止法における「営業秘密」とは、単に秘密の情報を指すのではありません。企業が経済的な価値を持つ情報として、法的な保護を受けるためには、上記の3要件が客観的に認められる必要があります。
・秘密管理性 情報にアクセスできる者を制限し、かつその情報が秘密であることを認識できるようにしている状態です。施錠管理、パスワード制限、部外秘のラベル貼り付けなどが該当します。
・有用性 その情報があることで、製品開発のコストが下がったり、売上が伸びたりするなど、企業の事業活動に役立つ情報を指します。ただし、違法な行為そのものの記録や、公序良俗に反する情報は有用性が認められません。
・非公知性 Webサイトや雑誌などで誰でも見られる状態になく、一般的に知られていない情報であることです。たとえ企業内で守られていても、すでに広く公表されている技術などは対象外です。
誤った選択肢を排除する思考プロセス
アは、インターネットで公開されている時点で「非公知性」を満たしません。誰でも入手可能な情報を後から部外秘と表示しても、法律上の営業秘密には当たりません。
イは、「不正取引の記録」という点が重要です。たとえ厳重に管理されていても、その内容が「犯罪や不正行為」に関するものであれば、社会的に保護すべき「有用な営業上の情報」とは見なされず、有用性を欠くため営業秘密には該当しません。
ウは、「管理の有無にかかわらず」という部分が間違いです。秘密として管理しようとする企業側の意思や仕組み(秘密管理性)がなければ、どれほど重要な書類であっても、不正競争防止法による保護の対象からは外れてしまいます。
実務現場における営業秘密管理の重要性
この知識は、ITエンジニアや実務担当者が現場で働く際、情報の守り方を考える上で不可欠です。システム設計書や顧客リストは、何もしなければただの紙やファイルですが、適切な管理を行うことで初めて「法的保護を受けられる資産」へと変わります。
例えば、開発プロジェクトにおいて下請業者とやり取りをする際、単に「秘密にしておいてください」と口頭で伝えるだけでは不十分です。契約書で秘密保持を約束し、データには「機密」といったラベルを付け、アクセス権限を制限する。こうした一手間こそが、万が一の情報漏洩時に法的な対抗手段を確保するための必須プロセスとなります。試験対策としては、単に法律を暗記するだけでなく、これらの要件が「組織としての情報管理体制」を問うていると捉えることが大切です。