平成21年度 春期 ITパスポート試験 問30 解説 情報戦略の策定
企業の情報戦略を策定する場合,最も考慮すべき事項はどれか。
- ア IT技術の進化
- イ 経営戦略との整合性 ✓ 正答
- ウ 現行システムとの整合性
- エ ライバル企業の情報戦略
解説
情報戦略を策定する際の最も重要な判断基準は、その戦略が会社の目指すべき方向性(経営戦略)と合致しているかどうかです。ITはあくまで目的を達成するための手段であるため、戦略の優先順位において「経営戦略との整合性」が最上位となります。
なぜ経営戦略との整合性が最優先なのか
企業において情報戦略を策定する目的は、ITの力を借りて経営上の課題を解決し、事業を成功させることにあります。もし経営戦略と無関係な最新技術を導入しても、それはコストがかさむだけで、企業の成長には貢献しません。
「何のためにシステムを作るのか」「どのような価値を顧客に提供したいのか」という経営層の意思決定をITに落とし込むことが情報戦略の本質です。そのため、技術のトレンドを追うことや、既存システムを考慮することよりも先に、経営戦略との結びつきを固める必要があります。
誤った選択肢を排除する思考プロセス
各選択肢は一見重要そうに見えますが、本問の「最も考慮すべき」という問いに対しては不十分です。
・IT技術の進化:ITは日進月歩ですが、技術はあくまで道具です。経営戦略を達成するために「どの技術が必要か」を選ぶのが情報戦略であり、技術そのものを目的化してはいけません。 ・現行システムとの整合性:既存システムとの整合性は実務上重要ですが、経営戦略が大きく転換される場合、古いシステムを刷新(または廃棄)する必要が出てきます。過去のしがらみに縛られて戦略が歪んでは本末尾転倒です。 ・ライバル企業の情報戦略:競合分析は重要ですが、自社が目指す経営戦略と競合の戦略が異なれば、マネをしても成果は出ません。自社の強みを活かす戦略を優先すべきです。
実務現場における情報戦略の役割
この知識は、社内のシステム部門が経営層から「なぜそのIT投資が必要なのか?」と問われた際、その正当性を主張する根拠となります。
例えば、経営戦略が「顧客対応のスピード向上」であれば、それを実現するために「モバイル端末を全社員に配布する」という情報戦略が導き出されます。逆に、コスト削減が経営の最優先事項であれば、IT投資は現状の効率化に絞られるでしょう。
ITパスポート試験でこの問題が出題される意図は、受験生に対して「ITは独立した技術の話ではなく、経営の一部である」という視点を持たせることにあります。実際の業務でも、システム導入を検討する際は、常に「このシステムは、今の会社の目標に対してどのような役割を果たすのか」を考える姿勢が求められます。