平成22年度 秋期 ITパスポート試験 問4 解説 ベンダの選定方法
複数のシステム開発ベンダから RFP に基づいた提案を受けた。開発ベンダの選定方法として,最も適切なものはどれか。
- ア あらかじめ設定しておいた評価基準を用いて,提案内容を比較して選定する。 ✓ 正答
- イ 開発費用を抑えるために,提案内容によらず開発費用が最も安いベンダを選定する。
- ウ それぞれのベンダの強みと弱みを,SWOT 分析を用いて評価して選定する。
- エ ファンクションポイント法を用いて,提案システムの機能の充実度を測定して選定する。
解説
ベンダ選定において最も重要なのは、客観的な数値や基準に基づいた公平な比較です。RFP(提案依頼書)を提示する段階で、価格・技術力・実績・サポート体制といった評価項目とそれぞれの配点をあらかじめ決めておき、そのスコアに基づいて選定を行うアプローチが最も適切です。
ベンダ選定の公平性と評価基準の重要性
RFP(Request for Proposal)は、システム開発を依頼したい企業が、ベンダに対して「このようなシステムを作りたいので、具体的な提案と見積もりを出してください」と依頼する書類です。これに対して複数のベンダから提案が寄せられた際、何を基準に選ぶべきかが問題となります。
もし選定基準が曖昧なまま提案を受けてしまうと、プレゼンテーションの印象の良さや、特定の担当者との親密度といった主観的な要素に引きずられてしまうリスクがあります。これを防ぐために、選定作業に入る前に「評価基準」を明確化しておくことがITガバナンスやコンプライアンスの観点からも不可欠です。
評価基準には、一般的に以下のような項目が含まれます。
- 提案内容の適合性(システム機能が要件を満たしているか)
- 開発費用(予算内に収まっているか、コストパフォーマンスは良いか)
- ベンダの信頼性(過去の実績や経営状態、保守体制)
- 導入スケジュール(希望する納期に間に合うか)
これらを点数化して比較することで、組織全体が納得できる論理的な意思決定が可能になります。
誤った選定手法とそのリスク
他の選択肢がなぜ不適切なのかを整理すると、ベンダ選定で避けるべきポイントが見えてきます。
イの「費用が最も安いベンダを選ぶ」という考え方は、一見合理的ですが危険です。IT開発においては、極端に安い見積もりは「要件の理解不足」や「後の追加請求」につながるリスクを孕んでいます。安さだけで選ぶと、品質が極端に低かったり、プロジェクトが途中で頓挫したりする可能性があるため、費用はあくまで評価項目の一つとして扱うべきです。
ウの「SWOT分析」は、企業の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を分析する経営戦略のフレームワークです。各ベンダの特徴を把握する一助にはなりますが、具体的なシステム提案の優劣を詳細に比較して一社に絞り込むための直接的な道具としては不十分です。
エの「ファンクションポイント法」は、システムの機能数から開発規模を見積もる手法です。これはベンダ側が見積もりを算出する際や、発注側が見積もりの妥当性を検証する際には役立ちますが、ベンダそのものの選定基準(サポート体制や信頼性などを含む総合判断)としては範囲が狭すぎます。
実務における評価基準の活用
この知識は、単に試験のためのルールではなく、実際のビジネス現場で「透明性の高い意思決定」を行うために必須のプロセスです。
例えば、大規模な公的機関や上場企業のシステム調達では、選定後に「なぜそのベンダを選んだのか」という説明責任(アカウンタビリティ)が求められます。あらかじめ評価基準を文書化し、各社のスコアを記録に残しておくことで、不正な癒着を疑われることなく、合理的な判断であったことを証明できます。
また、発注側と受注側の認識のズレを防ぐ効果もあります。評価項目を整理する過程で、自分たちが何を最も重視しているのか(コストなのか、納期なのか、最新技術なのか)が明確になり、結果としてプロジェクトの成功率を高めることにつながります。