平成22年度 秋期 ITパスポート試験 問7 解説 コトラーの競争戦略
問7 業界内の企業の地位は,リーダ,チャレンジャ,フォロワ,ニッチャの四つに分類 できる。フォロワのとる競争戦略として,最も適切なものはどれか。
- ア 大手が参入しにくい特定の市場に焦点を絞り,その領域での専門性を極めることによってブランド力を維持する。
- イ 競合他社からの報復を招かないよう注意しつつ,リーダ企業の製品を参考にし てコストダウンを図り,低価格で勝負する。 ✓ 正答
- ウ 市場規模全体を拡大させるべく利用者拡大や使用頻度増加のために投資し,シェ アの維持に努める。
- エ トップシェアの奪取を目標として,リーダ企業との差別化を図った戦略を展開す る。
解説
問題文にあるフォロワ(Follower)という言葉から「追随者」や「模倣者」を連想し、トップ企業の成功を効率よく真似ることでリスクを抑え、利益を確保しようとする姿勢に合致する選択肢を選びます。
市場シェアに基づいた4つの戦略的地位
経営学者のフィリップ・コトラーは、市場における企業の地位をシェア(市場占有率)の大きさに応じて4つの類型に分け、それぞれに適した戦略を提唱しました。
- リーダ(Leader) 市場シェアがトップの企業です。市場全体を拡大させることや、トップの座を維持することを目的とします。
- チャレンジャ(Challenger) リーダに次ぐシェアを持ち、トップの座を奪うためにリーダに攻撃を仕掛ける企業です。
- フォロワ(Follower) 上位企業の成功を模倣し、開発コストやリスクを抑えて利益を狙う企業です。
- ニッチャ(Nicher) 特定の狭い市場(ニッチ市場)において、独自の専門性を発揮して生存を図る企業です。
今回の設問で問われているフォロワは、自ら新しい技術や市場を開拓するリスクを背負わず、リーダの製品を参考にして効率よく製品を供給する戦略を指します。
各選択肢の分析と判別プロセス
問題の正解を導き出すために、各選択肢がどの類型に該当するかを検討します。
ア 特定の市場に焦点を絞り、専門性を極める これはニッチャの説明です。大手が手を出さない小規模な市場や、特殊なニーズがある領域に特化することで、競争を避けつつ高い収益性を確保します。
イ リーダ企業の製品を参考にコストダウンを図り、低価格で勝負する これがフォロワの正解です。リーダが莫大な費用をかけて開発し、市場に受け入れられることが証明された製品を素早く模倣します。研究開発費を抑えられる分、低価格で提供することが可能になります。ただし、過度な安売りでリーダの逆鱗に触れ、価格競争で潰されないよう立ち回る慎重さも求められます。
ウ 市場規模全体を拡大させ、シェアの維持に努める これはリーダの説明です。市場全体のパイが大きくなれば、最大シェアを持つリーダが最も恩恵を受けるため、利用者の裾野を広げる広告や投資を積極的に行います。
エ リーダ企業との差別化を図り、トップシェアの奪取を目標とする これはチャレンジャの説明です。リーダと同じ土俵で戦うのではなく、異なる特徴(差別化)を打ち出すことで、リーダの顧客を奪いにいきます。
フォロワ戦略が選ばれる背景と学習の意義
ITパスポート試験においてこの知識が問われるのは、企業が限られた経営資源(人・物・金・情報)をどこに集中させるべきかという「戦略的思考」を理解するためです。
全ての企業がリーダを目指せるわけではありません。トップを狙うには巨額の投資が必要であり、失敗した時のリスクも甚大です。フォロワという立場は、一見すると「真似をしているだけ」のようにネガティブに捉えられるかもしれませんが、ビジネスの現実としては非常に合理的です。先行者の失敗から学び、成功したモデルだけを取り入れることで、確実に一定の利益を出すことができるからです。
IT業界でも、AppleやGoogleのようなリーダ企業が新しいサービスを立ち上げた後、それを追いかける形で機能が似た安価なサービスやデバイスが登場することがよくあります。これらはフォロワ戦略の一環であり、市場の多様性と価格競争を促進する役割も果たしています。このように、企業の規模や立ち位置によって取るべき最適な行動は異なるという視点を持つことが、この分野を学ぶ大きな意義です。