平成22年度 秋期 ITパスポート試験 問24 解説 物流業務の改善とシステム化
住宅建材の製造・販売を行う A 社は,物流業務の問題と,それを解決するための改善案を取りまとめた。改善案を実現するために,システム化すべき機能として,最も適切なものはどれか。 〔問題〕 営業所で商品を発注してから納品されるまでに数日掛かるので,欠品を恐れた営業所が全取扱商品ごとに在庫を抱えてしまっている。その結果,A 社全体で多大な在庫コストが発生している。 〔改善案〕 営業地域の主要エリアに物流倉庫を設置して,配送トラックを追加し,営業所からの発注受付後,当日中に配送ができるようにする。
- ア 営業所で担当地域の新規住宅着工戸数を照会できる仕組みを作る。
- イ 営業所の発注内容を物流倉庫に即時に伝えられる仕組みを作る。 ✓ 正答
- ウ 各営業所の店長が現在の在庫コストを把握できる仕組みを作る。
- エ 各営業所の販売実績を比較検討できる経営者用の分析機能を作る。
解説
問題解決のポイント
改善案の目的は「発注から当日中の配送を実現すること」です。そのためには、発注情報がどれだけ速く物流倉庫へ伝わり、倉庫側が配送作業を開始できるかが鍵となります。この視点に立つと、情報伝達を即時化する仕組みが必要であると判断できます。
システム化による業務改善の考え方
業務改善の問題では、現在の課題と、それを解決するための改善案、そしてその実現手段(システム化)が整合しているかを確認することが重要です。
今回のケースでは「営業所が抱える多大な在庫」が課題であり、その原因が「発注から納品までのリードタイムが長いこと」であると特定されています。これに対し、物流倉庫を設置し「当日配送」を行うという改善案が出されています。この改善を実現するためには、物理的な倉庫の設置だけでなく、発注から倉庫への指示出しというプロセスを高速化する情報システムが不可欠となります。
もし発注の連絡に電話や紙の帳票、あるいはシステム上のタイムラグが存在すれば、倉庫側は迅速に動くことができず、せっかくの物流ネットワークも十分に機能しません。「即時」というキーワードが、今回の正解の根拠となります。
なぜ他の選択肢は選ばれないのか
試験では、改善案の「目的」と「手段」が直結していないものを除外する思考プロセスが有効です。
アの新規住宅着工戸数の照会は、営業所がどれだけ売れるかを予測する需要予測には役立ちますが、目の前の「当日配送」を物理的に可能にする仕組みではありません。ウの店長が在庫コストを把握する機能は、コスト意識の向上には寄与しますが、配送速度の向上には直結しません。エの販売実績の比較分析も、経営戦略を立てるためのツールであり、物流現場のオペレーション改善とはレイヤーが異なります。
これらはすべて「あれば便利だが、今回の改善案の直接的な実行手段ではない」ものとして区別します。
ビジネス現場でのシステム構築
実際のシステム開発の現場では、このような「業務フローのボトルネック」を解消するためにシステムを導入します。
物流の世界では、発注情報がシステム経由で倉庫管理システム(WMS)に直接連携されることで、初めて物流拠点でのピッキング(商品の取り出し)や梱包指示が出されます。ITパスポートで問われるのは、単なるプログラミング知識ではなく、「どのような目的のために、どのような情報を、どこへ送るべきか」という業務とシステムの整合性を考える能力です。この考え方は、情報システム部門だけでなく、営業、物流、経営企画など、どのような職種においても業務プロセスを設計する際の基礎知識となります。