平成22年度 春期 ITパスポート試験 問12 解説 企画プロセスの作業
ソフトウェアライフサイクルの主プロセスを,企画,要件定義,開発,運用,保守に分け,企画プロセスでシステム化計画の立案を行うとき,そこで実施する作業として,適切なものはどれか。
- ア 対象業務の業務内容やルール,制約などの業務要件を明らかにする。 ✓ 正答
- イ 対象業務を確認・分析し,業務機能をモデル化する。
- ウ 対象システムの機能及び能力,セキュリティなどのシステム要件を明らかにする。
- エ 対象システムをテストするためのテスト仕様書を作成する。
解説
選択肢の判断基準
システム化における「企画プロセス」とは、システムを作る前段階の「何を、何のために、いくらでやるか」を決める時期です。この段階では、技術的な詳細(機能やテスト方法)を決める前に、そのシステムが必要とされる背景やビジネス上のルール(業務要件)を明確にする必要があります。したがって、業務の目的や制約を定義している選択肢アが正解となります。
ソフトウェアライフサイクル(SLCP)の役割分担
システム開発は、いきなりプログラムを書くわけではありません。プロジェクトの始まりから終わりまでを段階(プロセス)に分けるのがSLCPの考え方です。
今回の選択肢に含まれる各プロセスの役割を整理すると、問題の構造が見えてきます。
・企画プロセス:ビジネス上の課題解決のために、システム化の目的、費用、期間、業務のルールを決定する。 ・要件定義プロセス:企画で決まった方針に基づき、具体的にシステムが「何をするか」「どんな機能が必要か」を詰める。 ・開発プロセス:定義された要件に従い、設計、プログラミング、テストを行う。 ・運用・保守プロセス:完成したシステムを稼働させ、不具合の修正や機能の改善を行う。
プロセスを見極める論理的思考
この種の問題は、業務の「抽象度」に注目すると正解にたどり着きやすくなります。
企画プロセスは最も抽象度が高く、「なぜそれが必要か」という経営層に近い視点での決定が求められます。一方、要件定義や開発プロセスに進むにつれ、内容は具体的かつ技術的な内容へと変化していきます。
・選択肢ア(業務要件の明確化):ビジネスの現場でのルール確認であり、システム化の前提となるため「企画」に該当する。 ・選択肢イ(業務機能のモデル化):業務の流れを分析し、システムに落とし込むための具体的な設計図作成であり「要件定義」に近い。 ・選択肢ウ(システム要件の明確化):セキュリティ能力や性能数値など、技術的な要件を定めるため「要件定義」である。 ・選択肢エ(テスト仕様書の作成):システムが正しく動くかを確認するための作業であり、開発プロセスの後半段階である。
このように、「経営・目的」→「機能・定義」→「実装・確認」という時系列の順序を意識することで、選択肢がどのタイミングで実施されるべきものかを判断できます。
現場で求められるシステム化の視点
実務の現場では、この企画プロセスの質がプロジェクトの成否を分けると言われています。いくら高い技術力があっても、企画段階で「業務の内容やルール」を正しく把握できていないと、完成したシステムが現場で全く役に立たないという状況に陥ります。
ITパスポートの試験においてこの知識を問う意図は、ITエンジニアだけでなく、ビジネスに携わるすべての人が「システム化は、まずは業務を理解するところから始まる」というプロセスを理解しているかを確認することにあります。この視点は、将来的にシステムの発注側(ユーザー)に回ったときや、要件定義の会議に参加する際に、非常に重要な武器となります。