平成25年度 秋期 ITパスポート試験 問86 解説 守秘義務契約の目的
N 社が, 見積依頼先の B 社及び C 社と守秘義務契約を締結した理由として, 適切 なものはどれか。
- ア N社と契約した業務を, 外部調達先が再委託することを禁止するため
- イ 外部調達先の従業員に, N 社プロジェクトメンバからの指揮命令を確実に守ら せるため
- ウ ソフトウェアに関する N社の著作権を守るため
- エ 見積書作成のために B 社, C 社に与える情報が, いずれかを通じて外部に漏れ るのを防止するため ✓ 正答
解説
守秘義務契約(NDA)の目的を見抜く
この問題は、守秘義務契約(NDA: Non-Disclosure Agreement)の根本的な目的を理解しているかを問うものです。契約の名称通り「秘密を守ること」が主眼ですので、見積もり依頼というプロセスで「企業間の秘密情報が漏れるリスク」に焦点を当てている選択肢エが正解となります。
なぜ秘密を守る必要があるのか
守秘義務契約は、業務の打ち合わせや見積もりの依頼、あるいは実際のプロジェクト遂行中に知り得た相手方の機密情報(顧客情報、技術資料、未公開の経営戦略など)を、許可なく第三者に開示したり、本来の目的以外に使用したりすることを禁止する契約です。
ビジネスの現場では、仕事を発注する側(発注元)が、適正な見積もりや提案を受けるために、自社の内部情報を外部企業(ベンダー)に開示しなければならない場面が多くあります。しかし、その情報はライバル企業に知られると致命的なダメージになるものかもしれません。そのため、情報を渡す前に「もし漏らしたら法的責任を問う」という約束を交わすことで、情報の安全性を担保しています。
判断のプロセス:選択肢の消去法
本問を解く際は、それぞれの選択肢がどのような契約や管理手法と関連しているかを考えるとスムーズです。
アは、再委託に関する「業務委託契約」や「再委託禁止条項」の内容です。守秘義務契約の範疇ではありません。 イは、指揮命令系統に関する話であり、「派遣契約(労働者派遣)」における偽装請負を防止するための論点です。 ウは、知的財産権の保護に関する内容であり、「著作権譲渡」や「利用許諾」に関する契約条項です。 エは、まさに機密情報の取り扱いそのものを指しています。見積もり段階で開示する情報は、自社の戦略に関わる重要なものであることが多く、それが外部へ漏れることを防ぐという目的と合致しています。
ビジネス現場における契約の役割
この知識は、実務において非常に重要な役割を果たします。ITのプロジェクトが始まる際、まずはNDAを締結するのがビジネスの「定石」です。
もしNDAを交わさずに機密情報を渡してしまえば、相手がその情報を勝手に他社へ流出させたり、自社の利益のために悪用したりしても、法的に制裁を加えることが非常に困難になります。この問題は、単なる暗記問題ではなく、ITエンジニアやプロジェクト管理者が「仕事の開始前には必ず契約という防壁を作る」というリスク管理の重要性を認識しているかを問うています。
試験においては、契約名が何のために存在するのか、その「動詞(守る、貸す、譲る)」と「目的語(秘密、著作権、指揮命令)」をセットで結びつけておくことが重要です。