平成25年度 秋期 ITパスポート試験 問87 解説 請負契約の変更項目
問87 N社とB社は,ソフトウェア開発の期間短縮を実現するために,締結している請負契約の変更に合意し,6月末に請負契約の変更契約を締結した。このとき,最初の請負契約から変更になった項目の組合せはどれか。\n\n① 契約金額\n② 商品仕様\n③ 納期\n④ 納入物
- ア ①と②
- イ ①と③ ✓ 正答
- ウ ②と④
- エ ③と④
解説
期間短縮の鉄則を見抜く
この問題の判断ポイントは、プロジェクトマネジメントにおける「トレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)」の関係にあります。開発期間を短縮するためには、リソースを追加してコスト(契約金額)を増やすか、あるいは作業範囲を限定するなどの対応が必要です。本問のように「期間短縮のみ」を目的とする場合、品質や成果物(仕様・納入物)は維持したまま、コストと納期という管理パラメータが動くのが一般的です。したがって、変更されるのは「契約金額」と「納期」の組み合わせとなります。
ソフトウェア開発におけるコスト・納期・範囲の三要素
ソフトウェア開発のプロジェクト管理では、QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)のバランスが非常に重要視されます。これらはしばしば「プロジェクトの三角形」と呼ばれ、一つを短縮または改善しようとすると、残りの要素に影響が及びます。
今回のケースでは、開発期間の短縮という目標が最優先されています。通常、開発期間を短くする場合、人員を増強したり、残業代などのコストを投入したりする必要があるため、契約金額が増加します。また、もちろん短縮した期間に合わせて、新しい納品日を設定し直す必要があるため、納期も変更対象となります。
一方で、仕様や納入物を変更してしまうと、当初予定していた製品としての価値が変わってしまう恐れがあります。期間短縮という契約変更において、あえて仕様まで変えてしまうと、それはもはや別のプロジェクトになりかねないため、通常は仕様や納入物は「変更しないもの」として扱われます。
なぜこの組み合わせが正解となるのか
試験の出題意図として、受験生が「コスト(お金)」「納期(時間)」「品質(仕様・納入物)」の関係性を正しく理解しているかどうかが問われています。
もしあなたがプロジェクトマネージャーの立場であれば、期間短縮を要求された際、即座に「では、追加予算とスケジュールの見直しが必要です」と判断しなければなりません。この問題は、単なる知識の暗記ではなく、IT現場で頻繁に発生する契約上の交渉や管理判断をシミュレーションさせるための構造になっています。仕様や納入物といった成果物の内容までむやみに変更してしまっては、契約の目的である「当初の製品を完成させること」が達成できなくなるという論理を理解しておくことが重要です。
実際の現場での応用
この知識は、ITパスポートの試験対策だけでなく、将来エンジニアやITコンサルタントとして働く際にも非常に役立ちます。クライアントから「納期を早めてほしい」と無理な依頼が来た際、このQCDの原則に基づき「仕様を維持するなら追加費用が必要」「費用を維持するなら一部の機能を削る必要がある」といった、論理的な代替案を提示する根拠となるからです。