平成25年度 秋期 ITパスポート試験 問88 解説 ガントチャートと期間短縮
問88 N社は,7月1日から図1のガントチャートの変更計画に従って工程管理を開始した。この変更計画で,プロジェクト期間を全体で1か月短縮することを可能にする対策の説明として,適切なものはどれか。
- ア B社のソフトウェア開発作業を0.5か月短縮し,受入試験・検収を0.5か月早める。
- イ B社のソフトウェア開発作業を0.5か月短縮し,受入試験・検収を0.5か月早める。かつ,流通計画・プロモーション業務の開始を前倒し,B社のソフトウェア開発作業と0.5か月並行作業を行う。 ✓ 正答
- ウ B社のソフトウェア開発作業を1か月短縮する。
- エ 流通計画・プロモーション業務の開始を前倒し,B社のソフトウェア開発作業と1か月並行作業を行う。
解説
プロジェクトの期間を短縮するためには、プロジェクトの完了までにかかる最も長い経路、すなわち「クリティカルパス」に着目します。この問題では、単一の工程を短縮するだけでなく、本来は順番に行う工程を並行作業に変えるという工夫を組み合わせることで、目標である1か月短縮を達成するのが正解への近道です。
クリティカルパスとプロジェクト短縮の基本原則
プロジェクト管理において、全体の期間を決定づける最長の経路をクリティカルパスと呼びます。この経路上にある作業が1日でも遅れると、プロジェクト全体の終了日も後ろにずれてしまいます。逆に言えば、プロジェクト全体の期間を短縮したい場合、クリティカルパス上の作業を短縮する以外の選択肢はあり得ません。
今回のケースでは、ただ作業時間を削るだけでなく、「クラッシング」や「ファストトラッキング」といった手法の考え方を取り入れています。
- クラッシング:作業に投入する資源を増やして、作業時間そのものを短縮する(本問の「B社のソフトウェア開発を0.5か月短縮」にあたります)。
- ファストトラッキング:直列で行う作業の一部を並行して進めることで、期間を短縮する(本問の「流通計画・プロモーション業務の開始を前倒し」にあたります)。
問題を読み解くための思考プロセス
この問題を解く際のポイントは、全体で1か月という目標に対して、それぞれの選択肢がどの程度効果を持つかをシミュレーションすることです。
まず、クリティカルパスを見極めます。通常、プロジェクトは「開発」→「試験」→「リリース(プロモーション)」といった流れで進みます。ここで「B社の開発」と「流通計画・プロモーション」が直列に並んでいる場合、合計期間は長くなります。
選択肢イのように、「開発作業自体を0.5か月短縮する」ことで、まず試験開始のタイミングを0.5か月早めることができます。さらに、本来は開発が終わってから着手するはずだった「流通計画・プロモーション業務」を、開発の後半0.5か月分と重ねる(並行作業にする)ことで、合計1か月の短縮が可能になります。
もし他の選択肢のように、開発だけを1か月短縮しようとすると、その分だけ人件費や負荷が極端に集中し、品質低下のリスクが生じたり、あるいはそもそも物理的に不可能なケースが多々あります。実務では、このように「作業短縮」と「並行実施」を組み合わせるのが、現実的かつ最も効果的な短縮手法となるのです。
実務におけるプロジェクト管理の重要性
この知識は、ITシステム開発に限らず、あらゆるプロジェクト管理において必須となる考え方です。例えば、社内イベントの準備や、期限が迫った課題レポートの作成などでも応用できます。
すべての工程を無理やり詰め込むのではなく、「どの作業が全体のボトルネックになっているか(クリティカルパスはどこか)」を把握し、そこに対して「リソースの追加」または「工程のオーバーラップ(並行化)」を行うという判断は、リーダーシップを発揮する場面で非常に有効です。本問のような構成は、プロジェクトの効率性を最適化するための論理的思考力を試す、マネジメント分野の典型的な良問といえます。