平成25年度 秋期 ITパスポート試験 問98 解説 システム移行の識別番号
A図書館には数十万冊の蔵書があり, 新システムに移行するためには, シート状 に加工したRFIDを全ての書籍に貼る必要がある。移行期間中は, 現在書籍に貼って あるバーコードと新たに導入するRFIDを併用し, 業務を止めずに新システムにスム ーズに移行するため, 貸出履歴を管理するためのファイル(テーブル)は現在のシ ステムのものをそのまま利用する方法を考えた。次の記述中のa, bに入れる字句の 適切な組合せはどれか。 Bさんは, 新システムにスムーズに移行する方法を実施するために, 書籍の識別 番号と, 利用者カードの利用者番号について, 次のようにすることにした。 書籍の識別番号: a 。 利用者カードの利用者番号: b 。
- ア ✓ 正答
- イ
- ウ
- エ
解説
この問題の正解は、アです。
貸出履歴テーブルをそのまま流用することが条件であるため、新旧システム間でデータの一貫性を保つ必要があります。テーブルの主キーや外部キーとして定義されている識別番号を変更してしまうと、過去のデータと照合できなくなるため、現行の識別番号をそのまま利用するのが正解です。
データの一貫性とシステム移行の考え方
データベースにおいて、テーブルはレコードを特定するための識別番号(ID)をキーとして管理しています。もし新システム導入時に、書籍や利用者の番号を新しく採番し直すと、旧システムで作成された貸出履歴データと、新システムで発生する貸出データの間で整合性が取れなくなります。
「業務を止めずにスムーズに移行する」ためには、システムを切り替える瞬間も、また併用期間中も、貸出履歴テーブルが矛盾なくデータを記録し続けられる状態である必要があります。そのためには、システムが参照するID体系を統一しなければなりません。
なぜ現行の番号を維持するのか
この問題は、システム移行における「データの連続性」を問うています。
書籍の識別番号 RFIDに新しく情報を書き込む際、バーコードと同じ識別番号を記録すれば、システム側は「RFIDを読み取ったのか、バーコードを読み取ったのか」を意識することなく、同じ書籍として処理できます。
利用者カードの利用者番号 同様に、カードのIDを変えてしまうと、過去の貸出履歴や未返却本の情報が新しいIDと紐付かなくなります。現行の番号をそのまま利用することで、カードを新調しなくても、あるいは古いカードのままでも、システムは同一人物として認証を行うことが可能です。
現場で求められるシステム移行の視点
実際のIT現場でも、新旧システムを並行稼働させる(並行稼働方式)際には、今回のようにマスターデータの移行や変換の手間を極力減らす設計が取られます。
この問題は、単なる知識の暗記ではなく、システム運用中の制約条件を正しく読み解く能力を測っています。既存の資産(データベースの内容)を活かしつつ、新しい技術(RFID)を取り入れるという「現実的な折衷案」を考えることは、ITエンジニアにとって非常に重要な視点です。