平成25年度 秋期 ITパスポート試験 問99 解説 RFIDシステムの活用
Bさんは〔要望事項〕を実現するために,市販されているRFIDを用いたシステムを調べ,次の施策を考えた。 ① RFIDを内蔵した利用者カードを発行し,書籍にはシート状に加工したRFIDを貼り,貸出,返却時にカウンタで用いるRFID読取装置を新たに導入する。 ② 全ての書籍棚の棚板にRFID読取装置を設置し,書籍と書籍棚をチェックするシステムを導入する。 ③ 返却ポストにRFID読取装置を設置する。 Bさんは,施策①〜③による効果を整理した結果,これらの施策では実現できない要望事項があることに気づいた。〔要望事項〕のうち,実現できない事項に該当するものとして,適切なものはどれか。
- ア (1)
- イ (2)
- ウ (3) ✓ 正答
- エ (4)
解説
各施策がどの業務プロセスに対応しているかを書き出し、それらが網羅できない「対象外の処理」を見つけることが正解への近道です。RFIDの導入が「何を自動化できるのか」という物理的な限界を理解していれば、問題文の文脈を読み解くことで自然に回答が導かれます。
RFIDで実現できることの分類
RFID(Radio Frequency Identifier)は、電波を用いてタグの情報を非接触で読み取る技術です。今回の施策を整理すると、図書館業務における「自動化の境界線」が見えてきます。
施策①の「貸出・返却のカウンタ処理」は、利用者と書籍のひも付け(貸出)や、その解除(返却)といった「カウンター業務の効率化」に直結します。 施策②の「棚板の読取装置」は、本が正しい場所にあるかを確認する「所在管理や棚卸し」を自動化します。 施策③の「返却ポスト」は、開館時間外の「返却受付」という特定の作業を自動化します。
これら①から③までの施策は、いずれも「あらかじめRFIDタグが正しく貼り付けられた書籍」を対象とした、場所や状態の認識に特化したものです。
実現できない要望事項を見抜く思考プロセス
試験問題の多くは、システム化の対象範囲をどこまで広げるかを問うています。この問題において「実現できない事項」として残るものは、通常、以下のいずれかの性質を持っています。
- システム外のイレギュラーな事象(本の破損、紛失、盗難への直接的な解決策など)
- RFIDの読み取り範囲外での動き(利用者の行動履歴の詳細な追跡など)
- 人的な判断が必要な複雑な要件(書籍の状態判定、希少図書の特別扱いなど)
今回の問題文の背景には、図書館の要望として「単純な貸出返却」以外の高度な管理が含まれている可能性があります。例えば、本が棚から持ち出された際に「誰が持ち出したか」をRFID単体で特定するには、棚の読取装置と利用者の特定を同時に行う高度な設備が必要です。もし要望事項(3)が「不正持ち出しの即時検知」や「特定の蔵書の厳格な追跡」といった、RFIDの単なる検知以上の精度を求めるものであれば、単純な設置のみでは実現が困難です。
システム導入の境界線を理解する意義
この問題の教育的意図は、技術を導入すればすべてが自動化されるわけではない、という「システムの限界」を理解させることにあります。
実務においては、IT導入をする前に「そのシステムでどこまでが自動化でき、どこからが人の手や別の手段が必要になるのか」を整理することが極めて重要です。RFIDを導入しても、タグが剥がれてしまった書籍を読み取ることはできませんし、持ち出し時にリーダーの範囲から外れてしまえば追跡は途切れます。
ITパスポート試験では、技術の名前を知っているだけでなく、その技術が「業務プロセスの中でどのような役割を果たし、どのような物理的な制約を受けるのか」という現場感覚的な視点が問われます。この視点を持つことで、将来システム提案や改善に関わる際に、コスト対効果を冷静に判断できるようになるはずです。