平成25年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問5 解説 システム化計画の立案
X社のシステム部門に所属しているA氏は,自社の会計システムの再構築プロジ ェクトの責任者を任された。システムの再構築を,企画プロセス,要件定義プロセ ス,開発プロセスの順で進めるとき,企画プロセスにおけるシステム化計画の立案 作業でA氏が実施する作業として,適切なものはどれか。
- ア 画面,帳票などのユーザインタフェース要件を確定する。
- イ システムに対する制約条件や業務要件について,関係者の合意を得る。
- ウ 提案依頼書を作成し,ベンダ企業に提案書の提出を求める。
- エ 品質,コスト,納期の目標値と優先順位を設定する。 ✓ 正答
解説
正解の判断基準
システム開発における「企画プロセス」は、プロジェクトの出発点であり、何のためにシステムを作るのか、どれくらいの予算や期間をかけるのかといった「大枠の計画」を立てる段階です。選択肢のうち、プロジェクトの方向性を定める「品質・コスト・納期(QCD)の目標設定」が企画プロセスの役割です。
企画プロセスとは何か
システム開発プロジェクトは、一般的に「企画」→「要件定義」→「開発(設計・実装・テスト)」→「運用・保守」という流れで進みます。企画プロセスは、経営戦略や事業目的を実現するために、どのようなシステムが必要かを具体化する前段階の「意思決定プロセス」です。
この段階では、技術的な細部(画面レイアウトや具体的な機能仕様)を決めるのではなく、プロジェクトの成功条件を定義します。具体的には以下の内容を決定します。
・システム化の目的と範囲 ・費用対効果(ROI)の試算 ・プロジェクトの実施体制 ・QCD(品質、コスト、納期)の目標値と優先順位 ・リスクの想定と対策
なぜ他の選択肢は誤りなのか
選択肢のアは「要件定義プロセス」の作業です。ユーザーがシステムで具体的に何をするのか、画面や帳票の使い勝手といった詳細を固めるのは、企画が終わった後に行われます。
選択肢のイも「要件定義プロセス」の作業です。システムに求められる業務上の要望や制限事項(法規制やセキュリティ基準など)を関係者と合意形成するのは、設計に落とし込む直前の重要なステップです。
選択肢のウは「調達プロセス」に含まれる作業です。システム化の方向性が決まり、それを外部企業に発注することを決定した後に、提案依頼書(RFP)を作成してベンダ選定へと進みます。
プロジェクト管理におけるQCDの考え方
なぜ企画段階で「品質・コスト・納期」の目標と優先順位を決める必要があるのでしょうか。これは、プロジェクトが始まると必ずと言っていいほど「要求の追加」や「トラブル」が発生するためです。
例えば、「納期は絶対に守らなければならないが、予算には多少の余裕がある」という優先順位が共有されていれば、トラブル時に「コストをかけて要員を追加し、納期を維持する」という判断が即座にできます。逆に「品質が最優先で、納期は遅れても良い」という合意があれば、慎重にテストを繰り返すことができます。
この優先順位を企画段階で決めておかないと、プロジェクトの後半で「あれもこれも」と追加要望が出た際に方針がブレてしまい、結果としてプロジェクトが炎上する原因となります。ITパスポート試験では、このような「プロセスを順序通りに進めることの重要性」を理解しているかが問われます。