平成25年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問16 解説 全体最適化計画
情報システムの全体最適化計画立案の際に,経営戦略との整合性を確保するために必要なこととして,最も適切なものはどれか。
- ア 現場社員からのヒアリング
- イ 情報システムの提案依頼書の策定
- ウ 中期経営計画書の理解 ✓ 正答
- エ 独立監査人の監査報告書の閲覧
解説
経営戦略と整合性(一致)が取れているかどうかを判断軸にするのが正解への近道です。問題文にある「経営戦略との整合性」というキーワードに注目し、経営方針や長期的な目標が記述されている文書を選ぶことで、選択肢ウが導き出せます。
なぜ中期経営計画書なのか
システムはあくまで経営の目標を達成するための「道具」です。経営戦略とは、企業が今後どのような事業を行い、どのような成果を目指すかを示す羅針盤です。
中期経営計画書には、経営陣が描く向こう数年間の具体的な目標や、取り組むべき優先順位、投資の方針が網羅されています。情報システムの全体最適化計画(どの部署のシステムをどう統合し、どのようなインフラを構築するかという計画)を立てる際、この計画書を理解していないと、「今の業務は楽になったが、会社が目指す新規事業には全く役に立たないシステム」を作ってしまうリスクがあります。そのため、経営戦略との整合性を確保する第一歩は、その中身を正しく理解することにあります。
選択肢の判断プロセス
経営層の意図が反映されているか、あるいは現場レベルの作業なのかという観点で絞り込みます。
- 選択肢ア:現場社員の意見は業務効率化には役立ちますが、経営戦略レベルの視点とは異なります。
- 選択肢イ:提案依頼書(RFP)はシステム開発の具体的な発注先を決めるための書類であり、計画の立案段階で行うべき「整合性の確保」という上位目的とはタイミングが異なります。
- 選択肢エ:独立監査人の報告書は、過去の会計や業務が適切であったかをチェックするものであり、将来に向けた経営戦略とは別の目的を持っています。
このように、ほかの選択肢は「実務的な手段」や「事後的なチェック」であるのに対し、ウだけが「経営の方向性の把握」という戦略的な上位概念に属しているため、正解となります。
実務における全体最適化の重要性
ITパスポート試験においてこの知識が問われるのは、システムエンジニアや情報システム部門の担当者であっても、技術的な知識だけでなく「経営視点」が不可欠だからです。
実際のビジネス現場では、部門ごとにバラバラにシステムを導入してしまう「部分最適」が起こりがちです。これを防ぐためには、企業全体で一つの目標に向かうための「全体最適化」が必要です。その際、IT担当者は「今のシステムを最新にする」ことではなく、「このIT投資によって、中期経営計画に掲げられた利益率目標や売上目標がどれだけ達成できるか」という視点を持たなければなりません。この問題は、ITというツールが経営という大きな枠組みの中に組み込まれているという、ITマネジメントの本質を問うています。