ITパスポート試験 / 平成25年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 / 問89
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平成25年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問89 解説 SLAの定義と合意

中間B 会計システムの導入に関する次の記述を読んで,四つの問いに答えよ。 F社の経理部では,ITサービスを行っているG社の会計システム(以下,新システムという)の導入を進めている。経理部では,新システムの稼働後は,G社へ新システムの保守と運用を委託する予定にしており,新システムが引き渡された後のサポート内容について,G社と詳細を詰めることにした。 保守,運用に関するG社の基本サービスは,次のとおりである。 〔保守,運用に関するG社の基本サービス〕 (a) 新システムについての問合せ対応は平日だけで,電子メールで受け付け,電子メールで回答を行う。 (b) 新システムで発生した障害の切分けと,発見されたバグの修正対応を行う。 (c) 新システム運用のサービス提供時間は,平日9:00〜19:00とする。 (d) 新システムで障害が発生した場合は,発生時から9時間以内に復旧を行う。 データのバックアップを日次で行い,1か月分のデータの保管を行う。ディスク障害が発生した場合は,前日までのデータの復旧を保障する。 一方,経理部は,新システムの利用及びサポートについて,G社に対して次の要望をもっている。 〔新システムの利用及びサポートに関する要望〕 (1) 新システムの使用方法の問合せを平日9:00〜18:00の間,電話と電子メールで対応してほしい。 (2) 新システムで障害が発生した場合に対応してほしい。 (3) 新システム稼働後も利便性向上のための新システムの修正を行ってほしい。 (4) 新システムの通常の利用は,平日9:00〜18:00としたい。 (5) 決算などの繁忙期は,夜間,休日なども新システムを利用できるようにして,また問合せにも対応してほしい。

  1. ✓ 正答

解説

この問題は、ITサービスの導入に際して、提供者と利用者間でどのような点について合意が必要か、その具体的な内容を読み解く能力を問うています。特に、SLA(サービスレベル合意書)の概念を理解し、提供側の「基本サービス」と利用側の「要望」を比較して、ギャップのある部分、つまり交渉や合意が必要な項目を特定することがポイントです。

SLA(サービスレベル合意書)とは何か

SLAとは「Service Level Agreement」の略で、サービスレベル合意書と訳されます。これは、ITサービスを提供する側と、そのサービスを利用する側との間で、提供されるサービスの品質や範囲、責任分界点などを具体的に定めた文書です。

SLAは、単なる契約書とは異なり、例えば「システムが停止した場合、〇時間以内に復旧させる」「問合せには〇分以内に回答する」といったように、サービスの品質に関する具体的な目標値や計測方法までを明確に記載します。これにより、サービス提供側と利用側の間でサービスの期待値のズレを防ぎ、トラブル発生時の責任の所在を明確にすることができます。

合意すべき項目を見つける思考プロセス

本問では、ITサービスを行うG社の「基本サービス」と、それを利用するF社の「要望」が示されています。SLAで合意すべき項目を特定するには、次のステップで両者の内容を比較検討します。

  1. 項目ごとの比較: サービスの各項目(問合せ対応、システム利用時間、障害対応など)について、G社の基本サービスとF社の要望を並べて比較します。
  2. ギャップの特定: 両者の間で条件や範囲に違いがある部分、またはG社の基本サービスにはないがF社が強く要望している部分が、SLAで明確に合意すべき「ギャップ」となります。
  3. 具体的な条件の洗い出し: 特定されたギャップについて、どのような具体的な条件(時間、手段、範囲、費用など)で合意すべきかを洗い出します。

G社の基本サービスとF社の要望の比較

それでは、具体的な項目ごとに両者の内容を比較してみましょう。

  • 問合せ対応

    • G社の基本サービス (a): 平日のみ、電子メール受付・回答。
    • F社の要望 (1), (5): 平日9:00〜18:00の間、電話と電子メールで対応してほしい。決算などの繁忙期は、夜間、休日も問合せに対応してほしい。
    • ギャップと合意点:
      • 対応時間: G社は平日のみで時間指定なし、F社は平日9:00〜18:00と指定し、さらに繁忙期の夜間・休日対応も求めています。この時間延長や休日対応は、追加費用が発生する可能性が高い項目です。
      • 対応手段: G社は電子メールのみ、F社は電話対応も要望しています。電話対応は即時性がある反面、G社にとっては人員配置のコストがかかるため、これも合意すべき重要な点です。
  • システム運用・利用時間

    • G社の基本サービス (c): 平日9:00〜19:00。
    • F社の要望 (4), (5): 通常利用は平日9:00〜18:00としたい。決算などの繁忙期は、夜間、休日なども利用できるようにしてほしい。
    • ギャップと合意点:
      • 通常利用時間: G社は19時まで、F社は18時までと通常時の終了時間に違いがあります。これはF社がG社のサービスをすべて使い切らないということになりますが、繁忙期の要望が重要です。
      • 繁忙期の利用: F社は決算期などの繁忙期に、夜間や休日もシステムを利用したいと要望しています。G社の基本サービスは平日9:00〜19:00に限られているため、この時間外の利用については追加料金や特別な合意が必要です。
  • システム修正・改修

    • G社の基本サービス (b): 発見されたバグの修正対応を行う。
    • F社の要望 (3): 新システム稼働後も利便性向上のための新システムの修正を行ってほしい。
    • ギャップと合意点:
      • 修正の範囲: G社は「バグ修正」のみを基本サービスとしていますが、F社は「利便性向上のための修正」も求めています。これは、新機能の追加や既存機能の改善を指すことが多く、一般的には追加開発として別途費用が発生する項目です。どの程度の修正までを基本サービスに含むのか、または別途契約・費用となるのかを明確にする必要があります。
  • 障害対応・復旧

    • G社の基本サービス (b), (d): 障害の切分けとバグ修正、発生時から9時間以内に復旧を行う。
    • F社の要望 (2), (5): 新システムで障害が発生した場合に対応してほしい。繁忙期は、夜間、休日なども利用できるようにして、また問合せにも対応してほしい。
    • ギャップと合意点:
      • 対応時間外の障害: G社の運用サービス提供時間は平日9:00〜19:00です。しかし、F社は繁忙期に夜間・休日もシステム利用と問合せ対応を求めているため、その時間帯に障害が発生した場合の対応レベル(例えば、何時間以内に一次対応を開始し、何時間以内に復旧させるのか)について、明確な合意が必要です。G社の「9時間以内復旧」が時間外にも適用されるのか、それとも時間外は対応レベルが下がるのか、といった点を詰めることになります。
  • データのバックアップ・復旧

    • G社の基本サービス (e): 日次バックアップ、1か月保管。ディスク障害時は前日までのデータ復旧を保障。
    • F社の要望: 特になし。
    • 合意点: F社からの特別な要望はありませんが、これがG社の基本サービスとして提供されます。もしF社がより頻繁なバックアップや、より長い期間のデータ保管、またはより短い復旧目標時間(RTO: Recovery Time Objective)やより新しい時点への復旧(RPO: Recovery Point Objective)を求める場合は、SLAで詳細を詰める必要があります。

本問でSLAとして合意すべき具体的な項目

上記の比較から、F社とG社が特にSLAで詳細を詰めるべき項目は以下の通りです。

  1. 問合せ対応の受付・対応時間と手段: 平日夜間、休日の問合せ対応の有無と、電話対応の可否、およびその際の追加費用。
  2. システム利用可能時間: 特に繁忙期の夜間・休日利用の可否と、その際の運用体制や追加費用。
  3. システム修正・改修の範囲: バグ修正以外の「利便性向上のための修正」の扱い(基本サービスに含むか、別途費用が発生するか、発生する場合の費用体系や実施頻度)。
  4. サービス時間外の障害対応: 平日19時以降や休日に障害が発生した場合の対応レベル(例: 復旧目標時間)と、それに対する費用。

これらの項目について、サービス提供者と利用者が互いの期待と責任を明確にすることで、将来的なトラブルを未然に防ぎ、スムーズなシステム運用を実現できます。

実務でのSLA活用と学習の意義

SLAは、ITサービスを導入・利用する企業にとって非常に重要な文書です。SLAをきちんと取り交わすことで、サービスの品質が保証され、予期せぬトラブルやコスト増大のリスクを低減できます。

ITパスポート試験でこのような問題が出題されるのは、ITサービスが私たちの社会やビジネスに深く浸透している現代において、情報システムを「利用する側」のビジネスパーソンも、サービスの品質や契約に関する基本的な知識が不可欠だからです。システム担当者だけでなく、経理部の担当者であっても、どのようなサービスが必要で、それに対してどのような合意が必要かを理解することは、ビジネスを円滑に進める上で求められるスキルと言えるでしょう。

参考リンク

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