平成25年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問98 解説 広告効果の比較分析
N社では, 広告によるショッピングサイトへの集客策として, 1か月のバナー広告と1回のメール広告を比較検討することにした。二つの案が次のとおりであるとき, これを比較した内容として, 適切なものはどれか。ここで, 各案のクリック率は, 表示された広告や送信されたメールの数に対する, N社ショッピングサイトへのリンク数の割合である。コンバージョン率は, 当該広告からのリンク数に対する購入手続完了の割合で, いずれも過去のデータに基づく予測値である。 〔二つの案〕 A案 C社ポータルサイトで, バナー広告をする。 費用 120,000円/月 広告表示回数 250,000件/月 バナー広告のクリック率 0.8% コンバージョン率 5% B案 D社のメールマガジンに広告を1回掲載する。メールはD社のデータベースを基に, スポーツ用品に関する情報の受信を希望している人にターゲットを絞って送信する。 費用 4円/メール1件 メール送信数 50,000件/回 メール広告のクリック率 5% コンバージョン率 8%
- A案は, 利用者に広告が届く件数が多いので, N社ショッピングサイトを訪れる利用者数を増やすためにはB案より効果的である。
- B案は, ターゲットを絞って送信するので, コンバージョン率は高いが, メール送信数が少ないので, 購入手続完了の件数はA案に劣る。
- B案は, クリック率が高いので, 利用者の1クリックを獲得するためのコストが, A案より安い。
- 広告によって購入手続完了を1件獲得するためのコストは, B案の方が安い。 ✓ 正答
解説
この問題は、異なる特性を持つ二つの広告案を比較し、最も費用対効果の高い選択肢を見つけるものです。具体的な計算によって、各案から得られる成果(購入手続完了件数)とそのためのコストを算出し、1件あたりのコストで比較検討します。
各広告案の費用対効果を計算する
まず、A案とB案それぞれについて「購入手続完了件数」と「1件あたりの購入手続完了コスト」を計算します。
A案(バナー広告)の計算
クリック数を算出: 広告表示回数250,000件にクリック率0.8%を掛けます。 件
購入手続完了件数を算出: クリック数2,000件にコンバージョン率5%を掛けます。 件
1件あたりの購入手続完了コストを算出: 費用120,000円を購入手続完了件数100件で割ります。 円/件
B案(メール広告)の計算
総費用を算出: メール送信数50,000件に1件あたりの費用4円を掛けます。 円
クリック数を算出: メール送信数50,000件にクリック率5%を掛けます。 件
購入手続完了件数を算出: クリック数2,500件にコンバージョン率8%を掛けます。 件
1件あたりの購入手続完了コストを算出: 総費用200,000円を購入手続完了件数200件で割ります。 円/件
比較結果
- A案の1件あたりの購入手続完了コスト: 1,200円
- B案の1件あたりの購入手続完了コスト: 1,000円
この比較から、B案の方が購入手続完了1件あたりのコストが低いことがわかります。したがって、「広告によって購入手続完了を1件獲得するためのコストは, B案の方が安い」が適切な比較内容です。
広告効果測定の基本指標
この問題で登場した「クリック率」や「コンバージョン率」は、Webマーケティングにおいて広告効果を測定する上で非常に重要な指標です。
クリック率(CTR: Click Through Rate)
広告が表示された回数(インプレッション数)のうち、実際にクリックされた回数の割合を示します。 クリック率が高いほど、広告の表現やターゲット設定がユーザーの関心を引いていると言えます。バナー広告やリスティング広告などの効果を測る際によく用いられます。
コンバージョン率(CVR: Conversion Rate)
広告をクリックしてWebサイトに訪れたユーザーのうち、最終的な目標達成(購入、会員登録、資料請求など)に至った割合を示します。 コンバージョン率が高いほど、Webサイトの内容や商品・サービスの魅力がユーザーに響き、購買意欲につながっていると言えます。広告だけでなく、ランディングページ(LP)やWebサイト全体の質もこの数値に影響を与えます。
1件あたりの獲得コスト(CPA: Cost Per Acquisition/Action)
1件の成果(この問題では購入手続完了)を獲得するためにかかった費用のことです。 CPAは、広告の費用対効果を直接的に示す指標であり、今回の問題のように異なる広告手法を比較検討する際に非常に役立ちます。CPAが低いほど、効率的に成果を獲得できていると言えます。
費用対効果で選ぶ広告戦略
この問題の意図は、単にクリック率やコンバージョン率が高いだけでなく、最終的な「費用対効果」を考慮して最適な広告戦略を選ぶ能力を問うことにあります。
B案はA案に比べてメール送信数が少ないものの、ターゲットを絞っているためクリック率もコンバージョン率も高いという特性がありました。このような「ターゲットを絞る」マーケティング手法は、広告のリーチ数は減るかもしれませんが、その分、興味関心のあるユーザーに深くアプローチできるため、結果として効率の良いコンバージョンにつながることがよくあります。
マーケティング戦略を立てる際には、広告の「認知度向上」を目的とするのか、「売上向上」を目的とするのかによって、重視する指標が変わってきます。この問題のように購入手続完了(売上)を目的とする場合は、CPAを最重要指標として、いかに効率よく成果を得られるかを比較検討することが求められます。
この知識が活かされる場面
この問題で学んだ知識は、ITパスポート試験の「企業活動」分野、特にマーケティングや経営戦略の理解に直結します。実際のビジネスシーンでは、以下のような場面で活用されます。
- 広告予算の配分: どの広告媒体(Web広告、SNS広告、メール広告など)にどれくらいの予算を割り当てるべきか決定する際に、CPAなどの費用対効果を基準に判断します。
- 広告キャンペーンの効果測定: 実施した広告キャンペーンが目標達成にどの程度貢献したか、費用に見合った成果が得られたかを評価するために、クリック率、コンバージョン率、CPAなどを分析します。
- A/Bテストの評価: 広告のクリエイティブ(画像やテキスト)やランディングページのデザインを複数パターン用意し、どちらがより高い効果を上げるか検証する際に、これらの指標を用いて比較します。
- 新規事業のマーケティング計画: 新しい製品やサービスを市場に投入する際、どのような広告手法が最も効果的で、かつ費用を抑えられるかを検討するために、過去のデータや競合他社の事例を基に予測値を立て、シミュレーションを行います。
このように、ITパスポートで問われる基本的な計算や概念は、データに基づいた合理的な意思決定を行うための重要な土台となります。