平成26年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問48 解説 SLAの利点
SLAには,サービス提供者とサービス利用者との間で合意されたサービス内容などの取決めを記載する。SLAを取り交わすことによって得られるサービス提供者とサービス利用者双方の利点として,適切なものはどれか。
- ア サービスの実施内容に基づき請求料金の妥当性を証明することができる。
- イ サービスの内容,提供範囲,要求水準に関する共通認識をもつことができる。 ✓ 正答
- ウ サービスの内容が不十分な場合に料金の見直しを要求することができる。
- エ サービスの内容に関する過剰な要求を受けることなく業務を遂行できる。
解説
SLA(サービスレベル合意書)の正体は、サービス提供者と利用者の間の「約束事のルールブック」です。選択肢を選ぶ際は、サービス提供者と利用者の「両方にメリットがあるか」という視点で考えます。SLAの本質は「お互いの期待値を一致させること」にあるため、認識の食い違いを防ぐという選択肢イが正解となります。
SLA(Service Level Agreement)とは何か
SLAはサービスレベル合意書のことであり、提供されるサービスの品質、範囲、責任分界点などを具体的に明文化したものです。例えば、クラウドサービスであれば「稼働率99.9%を保証する」「障害発生時の対応時間は最大何時間以内とする」といった具体的な数値目標や、提供の範囲を定義します。
ビジネスの現場では、「これくらいやってくれるだろう」という利用者の期待と、「この範囲までは契約外だ」という提供者の認識がずれることでトラブルが発生します。SLAは、こうした「言った・言わない」のトラブルを未然に防ぎ、透明性の高いビジネス関係を構築するために不可欠なツールです。
なぜ「共通認識」が最重要なのか
ITパスポート試験において、SLAに関連する問題で重要なのは「どちらか一方に有利なもの」ではなく「双方が納得感を持って業務を進めるための手段」として理解することです。
例えば、他の選択肢を見てみましょう。 ・選択肢アやウのような「料金の見直し」や「妥当性の証明」は、SLAの結果として行われることではありますが、SLAの主たる目的ではありません。 ・選択肢エは提供者側に偏ったメリットであり、利用者側の視点が欠けています。
SLAを結ぶ真の目的は、ITサービスを提供する側と受ける側が「どこまでがサービスで、どこからが追加費用なのか」「どこまでが品質保証の範囲なのか」を事前に話し合い、合意しておくことにあります。これにより、双方にとって公平で予測可能なビジネス環境が維持されます。
実務におけるSLAの活用
実際のIT現場では、SLAに定める「サービスレベル」を監視し、その結果を定期的に「SLR(サービスレベル報告書)」として利用者に提示します。もし稼働率がSLAで約束した数値に届かなかった場合、提供者はペナルティとして料金の減額を行ったり、改善計画を提示したりします。
このように、SLAは単なる書類ではなく、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回すための基準となるものです。システム開発だけでなく、運用保守やクラウド利用契約など、現代のITビジネスにおいて避けては通れない非常に実践的な知識といえます。