平成27年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問3 解説 請負契約と偽装請負
請負契約によるシステム開発作業において,法律で禁止されている行為はどれか。
- ア. 請負先が,請け負ったシステム開発を,派遣契約の社員だけで開発している。
- イ. 請負先が,請負元と合意の上で,請負元に常駐して作業している。
- ウ. 請負元が,請負先との合意の上で,請負先から進捗状況を毎日報告させている。
- エ. 請負元が,請負先の社員を請負元に常駐させ,直接作業指示を出している。 ✓ 正答
解説
請負契約か労働者派遣契約かを見分ける最大のポイントは、作業員への指揮命令権が誰にあるかを確認することです。発注者(請負元)が作業員に対して直接「この作業をやってください」「今日は残業してください」といった指示を出している場合は、契約形態が請負であっても法律違反(偽装請負)となります。
指揮命令系統による契約の判別
システム開発における外部リソースの活用には、主に請負契約と労働者派遣契約の2種類があります。この2つの決定的な違いは、現場で誰がリーダーシップを執るかという点にあります。
請負契約は、仕事の完成に対して報酬を支払う契約です。そのため、作業員がどのように動くか、どのような手順で進めるかといった具体的な指示は、雇用主である請負先企業が行わなければなりません。一方、労働者派遣契約は労働力を提供する契約であるため、派遣先(請負元に相当)が作業員に直接指示を出すことができます。
今回の問題の選択肢エでは、請負元が請負先の社員に直接作業指示を出しています。これは、契約の実態が派遣であるにもかかわらず、書類上は請負として処理されている状態であり、職業安定法や労働者派遣法に抵触する偽装請負として禁止されています。
偽装請負が禁止されている理由
なぜ偽装請負が厳しく禁止されているのか、その背景には労働者の保護という目的があります。
もし偽装請負を許してしまうと、請負元(発注者)は労働者に対して雇用責任(社会保険の加入や給与の支払いなど)を負うことなく、派遣契約のような自由な指示出しが可能になってしまいます。これにより、労働者の雇用が不安定になったり、責任の所在が曖昧なまま過酷な労働を強いられたりするリスクが生じます。
IT業界では客先常駐(クライアントのオフィスに座って作業すること)が一般的ですが、常駐すること自体は違法ではありません。しかし、同じ部屋にいるからといって、発注担当者が受注側のエンジニアに直接指示を出すことは、この境界線を越える行為となります。
他の選択肢が適切である理由
ア. 請負先が派遣社員だけで開発している 請負企業が自社の労働力を確保するために派遣社員を利用することは、請負企業と派遣会社の間で適切な派遣契約が結ばれていれば問題ありません。
イ. 請負元に常駐して作業している 契約内容で合意されていれば、作業場所が請負元のオフィスであっても構いません。重要なのは場所ではなく、誰が指示を出しているかです。
ウ. 進捗状況を毎日報告させている 発注者が仕事の進捗を管理し、注文通りに作業が進んでいるか確認することは、請負契約における注文主の正当な権利です。これは具体的な作業手順の指示(指揮命令)とは区別されます。
実務での活用と試験対策の視点
この知識は、皆さんが将来プロジェクトマネージャーやリーダーとして外部ベンダーと協力する際に、法的リスクを回避するために必須となります。請負契約でプロジェクトを推進する場合、不満や要望があったとしても、必ず相手方の責任者(連絡窓口)を通じて伝えるように徹底しなければなりません。
試験対策としては、誰が誰に命令しているかを文章から読み取る訓練をしましょう。
- 指揮命令権が雇用主にある = 請負契約、準委任契約
- 指揮命令権が契約先(現場)にある = 労働者派遣契約 この原則を覚えるだけで、法務・マネジメント系の問題は非常に解きやすくなります。