平成27年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問5 解説 SaaSの利用
自社で利用する購買システムの導入に当たり,外部サービスであるSaaSを利用した事例はどれか。
- ア サービス事業者から提供される購買業務アプリケーションのうち,自社で利用したい機能だけをインターネット経由で利用する。 ✓ 正答
- イ サービス事業者から提供されるサーバ,OS及び汎用データベースの機能を利用して,自社の購買システムを構築し,インターネット経由で利用する。
- ウ サービス事業者から提供されるサーバ上に,自社の購買システムを構築し,インターネット経由で利用する。
- エ 自社の購買システムが稼働する自社のサーバをサービス事業者の施設に設置して,インターネット経由で利用する。
解説
この問題の最も簡潔な解き方は、サービスとして提供されている「対象」に注目することです。SaaS(Software as a Service)は、名前の通り「ソフトウェア(アプリケーション)」をサービスとして提供する形態を指します。選択肢の中で、アプリケーションそのものを利用している記述を探せば、正解を導き出すことができます。
クラウドサービスの提供範囲による分類
ITパスポート試験において、クラウドサービスの形態を区別する知識は必須です。これらは、利用者がどこまでを自分で用意し、どこからを事業者にお任せするかという境界線によって、SaaS、PaaS、IaaSの3つに分類されます。
ソフトウェアをそのまま使うSaaS
SaaSは、事業者が稼働させているソフトウェアの機能を、ネットワーク経由で利用する形態です。利用者は、サーバやOSの存在を意識することなく、ブラウザなどを通じてアプリケーションの機能だけを使います。選択肢アのように、購買業務のためのアプリケーションをそのまま利用し、必要な機能だけを選ぶ形態は、SaaSの典型的な例です。
開発環境を利用するPaaS
選択肢イの「サーバ、OS、汎用データベース」までが提供される形態は、PaaS(Platform as a Service)と呼ばれます。アプリケーションを動かすための土台(プラットフォーム)を借りる形式です。利用者は、その土台の上で動作する独自のプログラムを開発・運用します。
インフラのみを利用するIaaS
選択肢ウの「サーバ」というインフラ設備のみが提供される形態は、IaaS(Infrastructure as a Service)と呼ばれます。事業者は仮想化されたサーバやストレージ、ネットワークを提供し、利用者はその上に好きなOSをインストールし、システム全体を構築します。自由度は最も高いですが、管理の手間も最大になります。
物理的な場所を借りるハウジング
選択肢エはクラウドサービスではなく、ハウジング(またはコロケーション)と呼ばれるものです。自社で所有する物理的な機材を、事業者のデータセンターに設置する形態を指します。
SaaSを選択するビジネス上の意図
この問題が問うているのは、単なる用語の暗記ではなく、ビジネスにおけるIT資産の持ち方の変化です。
かつて企業が購買システムを導入する場合、自社でサーバを購入し、ソフトウェアを一から開発、またはパッケージを購入してインストールする「オンプレミス」という形態が一般的でした。しかし、この方法では導入までに数ヶ月以上の期間を要し、サーバのメンテナンスやセキュリティ対策もすべて自社で行う必要があります。
SaaSを利用することで、企業は以下のようなメリットを享受できます。
- 導入スピードの向上:既に完成しているサービスを契約するだけで、すぐに業務を開始できる。
- 運用の効率化:システムの保守、バックアップ、最新版へのアップデートはすべて事業者が行うため、自社のIT担当者の負担が減る。
- コストの最適化:自社で資産を持つ必要がなく、利用人数や機能に応じた月額料金(サブスクリプション)で利用できる。
現代のビジネス現場では、差別化の源泉とならない定型的な業務(経理、人事、購買など)にはSaaSを積極的に活用し、自社の強みとなる独自のシステム開発にリソースを集中させる戦略が重要視されています。この問題は、そのような戦略的なIT活用の基礎知識を確認する意図があります。