平成27年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問6 解説 SCMシステム
SCMシステムの説明として,適切なものはどれか。
- ア 企業内の個人がもつ営業に関する知識やノウハウを収集し,共有することによって効率的,効果的な営業活動を支援するシステム
- イ 経理や人事,生産,販売などの基幹業務と関連する情報を一元管理し経営資源を最適配分することによって,効率的な経営の実現を支援するシステム
- ウ 原材料の調達から生産,販売に関する情報を,企業内や企業間で共有・管理することで,ビジネスプロセスの全体最適を目指すための支援システム ✓ 正答
- エ 個々の顧客に関する情報や対応履歴などを管理することによって,きめ細かい顧客対応を実施し,顧客満足の向上を支援するシステム
解説
SCM(Supply Chain Management)を読み解く最大のポイントは、その名称に含まれる「Supply(供給)」「Chain(連鎖)」という言葉の意味を捉えることです。原材料の調達、製品の製造、流通、そして消費者に届く販売までの一連の「供給の連鎖」をひとつの大きなプロセスとして管理し、全体の効率を最大化しようとする考え方がSCMです。選択肢の中から「調達から生産、販売に関する情報」や「全体最適」といったキーワードを探すことで、正解を導き出すことができます。
供給の連鎖(サプライチェーン)を管理する目的
従来の経営手法では、調達部門は安く買うこと、製造部門は効率よく作ること、販売部門はたくさん売ることといったように、部門ごとに個別の目標を追いかける傾向がありました。しかし、部門ごとに最適化を図ると、販売部門が欠品を恐れて在庫を抱えすぎたり、製造部門が予測を見誤って過剰な生産を行ったりする「部分最適」の弊害が生まれます。
SCMは、企業内だけでなく、原材料サプライヤーから小売店に至るまでの企業間の壁を越えて情報を共有します。これにより、市場の需要に合わせた適切なタイミングでの生産と配送が可能になり、在庫の削減やリードタイム(発注から納品までの時間)の短縮を実現します。これが、選択肢ウにある「ビジネスプロセスの全体最適」という言葉が意味する内容です。
紛らわしい関連用語との見分け方
ITパスポート試験では、SCMと似たアルファベット3文字の用語が頻出します。これらを明確に区別しておくことが合格への近道です。
選択肢アにある「営業に関する知識やノウハウの共有」は、SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)の説明です。個人の経験に頼りがちな営業活動をデータ化し、チーム全体で効率化することを目指します。
選択肢イにある「経営資源(人、物、金、情報)の最適配分」は、ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)の説明です。企業全体の基幹業務を統合的に管理し、経営判断を迅速に行うための仕組みです。SCMが「物の流れ」に注目するのに対し、ERPは「経営資源の統合」に主眼を置きます。
選択肢エにある「顧客満足の向上」は、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の説明です。顧客一人ひとりの購入履歴や問い合わせ内容を把握し、長期的な信頼関係を築くことを重視します。
ビジネス現場でのSCMの価値
SCMの知識は、単なるIT用語の暗記に留まりません。現代の製造業や流通業において、SCMは企業の競争力を左右する極めて重要な戦略です。例えば、人気商品の流行をいち早く察知して生産ラインに伝え、欠品させることなく全国の店舗に届ける仕組みや、逆に売れ行きが鈍い場合にすぐさま生産を絞って無駄な廃棄を減らす取り組みは、すべてSCMの概念に基づいています。
ITパスポート試験においてSCMが出題されるのは、ITの力を使って「企業間の情報の壁」を取り払い、社会全体の資源の無駄をなくすという現代ビジネスの基本構造を理解してほしいためです。システムを導入すること自体が目的ではなく、情報を共有することで全体のプロセスを最適化するという考え方を身につけることが、実務でも大いに役立ちます。