平成27年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問90 解説 プロジェクトのリスク管理
Aさんは,〔Zプロジェクトの状況〕の(5)が,プロジェクトが失敗する原因になりかねないと考え,開発に先立ち,その予防策を講じることにした。予防策の一つとして,適切なものはどれか。
- ア 過去に行ったプロジェクトのスケジュールを参考にして,今回のZプロジェクトのスケジュールを作成する。
- イ 現行製品から流用できるソフトウェアの設計書を集める。
- ウ 製品Zの改良後の機能と競合メーカの類似製品の機能を比較したリストを作成する。
- エ ソフトウェア開発メンバに対して,不足しているソフトウェア開発技術を教育する。 ✓ 正答
解説
この問題は、プロジェクトマネジメントにおけるリスク管理の考え方を問うています。正解を導くための鍵は、問題文で指摘されたリスクが「何に起因するものか」を正確に特定し、それに対する「直接的な解消策」を選ぶことです。
リスク管理における予防策の考え方
プロジェクトの進行を阻害する可能性がある要素をあらかじめ特定し、その影響を最小限にする活動をリスク管理と呼びます。
今回の問題では、チームメンバのスキル不足が原因で失敗するリスクが想定されています。この場合、リスクに対する対応戦略として「軽減(緩和)」がとられます。具体的には、リスクが発生する確率や影響度を下げるためのアクションをとります。
技術力不足というリスクに対して最も効果的で直接的な予防策は、開発を開始する前に「技術を補完すること」です。したがって、メンバに対して不足している技術を習得させる教育訓練が、最も適切な選択肢となります。
他の選択肢を検討してみましょう。 ・ア:過去のスケジュールを参照することは計画立案時の工夫であり、技術力不足の解決にはなりません。 ・イ:設計書の流用は再利用による効率化を指しており、メンバのスキル向上とは別次元の話です。 ・ウ:競合製品との機能比較はマーケティングや要件定義の活動であり、開発能力のリスクに対する直接的な予防策ではありません。
なぜこの知識が重要なのか
プロジェクトの成功率を高めるためには、単に納期や予算を管理するだけでなく、プロジェクトを遂行する「リソース(人員)」の能力を適正に評価することが不可欠だからです。
ITの現場では、新しい技術の導入や難易度の高い開発が必要となるケースが多々あります。その際に「今のメンバだけで本当に作り切れるのか?」という疑問を抱き、あらかじめ教育を行うことで、開発中の手戻りや品質低下、スケジュールの遅延を未然に防ぐことができます。
この問題の意図は、プロジェクトマネージャが直面する課題に対して、計画段階でどのような先手を打てるかを判断する「予見力」を確認することにあります。現場では、技術トレーニングだけでなく、外部の専門家を一時的に招くといった手段をとることも、広義のリスク軽減活動の一つです。