平成28年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問48 解説 プロジェクト管理
プロジェクトの目的を達成するために,プロジェクトで作成する必要のある成果物と,成果物を作成するために必要な作業を細分化した。この活動はプロジェクトマネジメントのどの知識エリアの活動か。
- ア プロジェクトコストマネジメント
- イ プロジェクトスコープマネジメント ✓ 正答
- ウ プロジェクトタイムマネジメント
- エ プロジェクトリスクマネジメント
解説
プロジェクトの「成果物と必要な作業を細分化」する活動は、何をどこまでやるかを明確にする「スコープ」を定義・管理するものです。したがって、プロジェクトスコープマネジメントが正解となります。
プロジェクトスコープマネジメントとは
プロジェクトスコープマネジメントとは、プロジェクトで「何を達成するのか(成果物)」と「それを達成するためにどのような作業を行うのか」という範囲を明確にし、その範囲が逸脱しないように管理するための一連の活動を指します。
プロジェクトにおける「スコープ」には、大きく分けて二つの側面があります。
- プロダクトスコープ: プロジェクトの最終的な成果物(製品、サービス、結果)が持つべき機能や特性のことです。「どのようなものを開発するのか」「どんな機能が必要か」といった、成果物そのものの範囲を示します。
- プロジェクトスコープ: プロダクトスコープで定義された成果物を完成させるために、プロジェクトで実施すべき作業の範囲のことです。「どの作業をどこまで行うのか」「何をプロジェクトの活動に含めるのか」といった、作業レベルの範囲を示します。
これらのスコープを明確に定義し、不要な作業の追加(スコープクリープ)や、逆に必要な作業の抜け漏れを防ぐことが、プロジェクト成功の鍵となります。
WBS(Work Breakdown Structure)の役割
問題文にある「成果物と、成果物を作成するために必要な作業を細分化」する活動は、まさにWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構造)の作成にあたります。WBSは、プロジェクトスコープマネジメントの中心的なツールの一つです。
WBSでは、プロジェクトで作り出す最終的な成果物を最上位として、それをより小さな構成要素へと階層的に分解していきます。例えば、システムの開発プロジェクトであれば、「システム全体」→「各機能モジュール」→「機能ごとの設計・開発・テスト作業」といった具合に分解されます。最終的には、タスクや作業パッケージと呼ばれる、コストや期間の正確な見積もりが可能で、特定の個人やチームに割り当てられるレベルまで細分化します。
WBSを作成することで、プロジェクトチーム全員が「何を」「どこまで」やるべきかを視覚的に理解でき、共通認識を持つことができます。これは、曖昧な指示や認識の齟齬による手戻り、作業の重複、抜け漏れを防ぐ上で非常に重要です。
なぜスコープマネジメントがプロジェクト成功の鍵なのか
プロジェクトが失敗する主な原因の一つに、スコープの不明確さや管理の甘さがあります。スコープが曖昧なままプロジェクトを進めると、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 予算超過: 定義されていない作業が後から追加されたり、不必要な機能まで開発したりすることで、コストが膨らみます。
- 納期遅延: 作業の範囲が広がりすぎたり、手戻りが発生したりすることで、計画通りの完了が難しくなります。
- 品質低下: 途中でスコープが変更されすぎると、開発やテストが十分にできず、品質が損なわれる可能性があります。
- 顧客との認識齟齬: 顧客とプロジェクトチームの間で「何を完成させるのか」の認識が異なると、最終的に顧客が満足しない成果物になってしまいます。
プロジェクトスコープマネジメントは、プロジェクトの初期段階で顧客や関係者と密に連携し、何をやるべきかを明確に合意形成することから始まります。そして、その合意した範囲を逸脱しないように管理し続けることで、予算、納期、品質といった他の目標達成にも大きく貢献するのです。
他の知識エリアとの関連性
ITパスポート試験で問われるプロジェクトマネジメントの知識エリアは、この問題の選択肢以外にも複数存在し、それぞれが密接に関連しています。
- プロジェクトコストマネジメント: プロジェクトに必要なコストを見積もり、予算を設定し、管理します。スコープが明確でなければ、正確なコストの見積もりは不可能です。
- プロジェクトタイムマネジメント: プロジェクトのスケジュールを作成し、管理します。スコープが明確でなければ、作業に必要な期間を正確に算定できません。
- プロジェクトリスクマネジメント: プロジェクトに潜在するリスクを特定し、分析し、対処計画を立てます。スコープが明確でなければ、どのようなリスクが存在するのかを把握することすら困難です。
このように、プロジェクトスコープマネジメントは、他のすべての知識エリアの基盤となる、非常に重要な活動であると理解しておきましょう。ITパスポート試験では、各知識エリアの役割と、それがプロジェクト全体の中でどのような位置づけにあるかを問われることが多いです。