平成28年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問67 解説 システムの可用性向上
システムの一部に障害が発生した場合でも,正常に処理を実行することができる 施策として,適切なものだけを全て挙げたものはどれか。 (1) HDDをミラーリングで構成する。 (2) システムの安定稼働後は,保守や点検の頻度をできるだけ減らす。 (3) 冗長化していた複数のネットワーク回線を,より高速な1本の回線にまとめ る。 (4) 無停電電源装置を設置するなどして電源を多重化する。
- ア (1),(3)
- イ (1),(4) ✓ 正答
- ウ (2),(3)
- エ (2),(4)
解説
障害発生時でもシステムを稼働させ続けるための施策
この問題は、システムの一部に障害が発生した場合でも、システム全体または一部の機能を継続して利用できるようにするための「可用性(Availability)」を高める施策について問われています。選択肢の中から、障害発生時の業務継続に貢献する適切な施策をすべて選ぶことが求められます。
解き方のポイント
「システムの一部に障害が発生した場合でも、正常に処理を実行することができる」という条件を満たす施策を選ぶことが重要です。これは、障害が発生しても代替手段がある、あるいは障害の影響を局所化できるような対策を指します。
- (1) HDDをミラーリングで構成する: HDD(ハードディスクドライブ)はデータの記録媒体です。ミラーリングとは、複数のHDDに同じデータを同時に書き込むことで、片方のHDDが故障してももう片方でデータが失われるのを防ぐ技術です。これにより、HDDの障害によるデータ喪失やシステム停止を防ぐことができます。
- (2) システムの安定稼働後は,保守や点検の頻度をできるだけ減らす: システムが安定稼働しているからといって、保守や点検の頻度を減らすのは、むしろ障害の予兆を見逃したり、問題が大きくなる前に発見する機会を失うことにつながります。これは可用性を下げる行為であり、不適切です。
- (3) 冗長化していた複数のネットワーク回線を,より高速な1本の回線にまとめる: ネットワーク回線を1本にまとめると、その1本の回線に障害が発生した場合、システム全体が通信不能になる「単一障害点(Single Point of Failure: SPOF)」となります。本来、冗長化(複数の経路を用意すること)は可用性を高めるための施策ですが、これを減らすことは、障害発生時のリスクを高めることになります。
- (4) 無停電電源装置を設置するなどして電源を多重化する: 無停電電源装置(UPS)は、停電が発生した場合でも一定時間電力を供給し続ける装置です。これを複数設置するなど、電源供給経路を多重化(冗長化)することは、電源障害によるシステム停止を防ぐために非常に有効です。
これらの検討から、(1)と(4)が「システムの一部に障害が発生した場合でも,正常に処理を実行することができる」施策として適切であると判断できます。
可用性を高めるための「冗長化」とは
この問題で問われているのは、ITシステムにおける「可用性」という概念です。可用性とは、システムやサービスが、必要な時に、必要な機能を提供できる能力のことを指します。計画停止(メンテナンスなど)や、予期せぬ障害(ハードウェア故障、ソフトウェアのバグ、ネットワーク障害、停電など)が発生した場合でも、システムを継続して利用できる度合いを示す指標とも言えます。
可用性を高めるための最も基本的な考え方の一つが「冗長化(Redundancy)」です。冗長化とは、システムの一部に故障が発生しても、代替となる予備のシステムやコンポーネントが稼働し続けるように、システムに重複した部分を持たせることを言います。
冗長化の具体的な例
今回の問題で挙げられている(1)と(4)は、まさに冗長化の代表的な例です。
- (1) HDDのミラーリング: データを保存するHDDを2台以上用意し、常に同じ内容を書き込みます。これにより、一方のHDDが故障しても、もう一方のHDDにアクセスすることでデータの消失を防ぎ、システムを継続させることができます。これは、ストレージ(記憶装置)の冗長化と呼ばれます。
- (4) 電源の多重化(UPSの設置など): システムへの電力供給は、システム稼働の根幹です。電力会社からの供給が途絶えたり、電源装置自体が故障したりすると、システムは停止してしまいます。UPSを設置したり、複数の電源ユニットを搭載したサーバーを使用したりすることで、電源供給の安定性を高め、一時的な停電や電源装置の故障によるシステム停止を防ぎます。これは、電源システムの冗長化です。
冗長化がもたらすリスクと注意点
一方で、冗長化は必ずしも万能ではありません。
- (3) ネットワーク回線の集約: 複数のネットワーク回線を1本にまとめるという行為は、冗長化によって得られていた障害耐性を失わせ、単一障害点を生み出します。これは、コスト削減や管理の簡素化といったメリットがあるかもしれませんが、可用性という観点からはリスクを高めます。
- 保守・点検の重要性: (2)の選択肢が不適切であるように、冗長化しているからといって保守や点検を怠ると、冗長化されているコンポーネントに同時に障害が発生するリスクが高まります。例えば、ミラーリングしている2つのHDDが、どちらも古いままメンテナンスされずに放置され、同時に寿命を迎えて故障するというケースも考えられます。
システムを安定稼働させ、可用性を高く維持するためには、適切な冗長化策を講じるだけでなく、それらの冗長化されたコンポーネントも含めた定期的な保守・点検が不可欠なのです。