平成28年度 春期 ITパスポート試験 問27 解説 全体最適化手法
企業の業務と情報システムの現状を把握し, 目標とするあるべき姿を設定して, 全体最適を図りたい。このときに用いられる手法として, 適切なものはどれか。
- ア DOA (Data Oriented Approach)
- イ EA (Enterprise Architecture) ✓ 正答
- ウ OOA (Object Oriented Analysis)
- エ SOA (Service Oriented Architecture)
解説
キーワードで判断する解き方
この問題は「組織全体(エンタープライズ)」「あるべき姿の設計」「全体最適」というキーワードに注目して判断します。これらすべてを包含し、組織全体の業務とシステムの構造を整理して最適化するためのフレームワークが「EA(Enterprise Architecture)」です。選択肢にある他の用語と混同せず、キーワードが示す対象の広さで選ぶのが正解への最短ルートです。
EA(エンタープライズアーキテクチャ)とは何か
EAは、企業や政府などの大規模な組織が、バラバラに導入されたシステムや非効率な業務プロセスを整理し、経営戦略に基づいて全体を最適化するための設計図のようなものです。
EAでは、組織の状態を以下の3つのステップで考えます。
- 現状分析(As-Is):現在の業務やシステムがどうなっているかを把握する。
- あるべき姿(To-Be):経営目標に基づき、理想的な業務とシステムの姿を描く。
- ギャップ分析:現状とあるべき姿の差(ギャップ)を埋めるための計画を立てる。
これを実現するために、EAでは業務とシステムを4つの階層(アーキテクチャ)に分けて整理します。 ・ビジネスアーキテクチャ(BA):業務の流れや組織の体制 ・データアーキテクチャ(DA):扱うデータの種類や管理方法 ・アプリケーションアーキテクチャ(AA):どのようなシステムが必要か ・テクノロジアーキテクチャ(TA):ネットワークやハードウェアなどの基盤
なぜこの知識が必要なのか
ITパスポート試験においてこの問題が問われる理由は、システム開発を「単なるプログラム作成」ではなく「経営課題の解決」として捉える視点を養うためです。
個別の部署だけで最適なシステムを作っても、組織全体で見るとデータが連携できなかったり、無駄な機能が重複していたりすることがよくあります。EAの考え方は、大規模なDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する際や、企業のITガバナンスを整える現場で必須となります。組織全体を俯瞰し、経営目標の達成に貢献するITをどう構築するかという「経営層と現場の橋渡し役」になるための基礎知識と言えます。
他の選択肢が誤りである理由
・DOA(Data Oriented Approach):データ中心アプローチ。データこそが業務の中心であると考え、データの構造を設計してからシステムを構築する手法です。あくまでデータ構造に着目したアプローチであり、組織全体のアーキテクチャ設計という広い枠組みではありません。 ・OOA(Object Oriented Analysis):オブジェクト指向分析。ソフトウェア開発の分析手法で、現実世界のモノ(オブジェクト)をデータと処理のセットとして捉え、プログラムを書きやすくするための手法です。開発現場の技術的な手法であり、経営レベルの全体最適とは異なります。 ・SOA(Service Oriented Architecture):サービス指向アーキテクチャ。システムを「サービス」という単位の部品として作成し、それらを組み合わせてシステムを構築する設計思想です。主にシステムの柔軟性や再利用性を高めるための技術的な手法です。